インスリン治療と低血糖

  • 後藤 由夫 (東北大学名誉教授、東北厚生年金病院名誉院長)
2015.10.21
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1. 血糖の恒常性

 糖尿病は血糖が異常に高くなる状態(高血糖)である。血糖は血液に含まれるブドウ糖(グルコース)で、普通は500mLの缶ビールに小さな角砂糖(6g)の1/10個を入れたくらいの濃度である。炭水化物の多いものを食べると血糖は上昇して150mg/dLくらいになるが、糖尿病では 200~300mg/dLにもなる。また1日絶食しても70mg/dL以下になることは少ない。事故などで1カ月間も食物をとらず、水だけをとっていても、血糖60~80mg/dLでそれ以下になることはない。

 食物をとらないでも血糖が下がらないのは、体の脂肪や蛋白質が分解して脂肪酸やアミノ酸となって、それが肝臓でブドウ糖に合成されて放出されるからである。これを糖新生という。

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