月刊糖尿病156号(Vol.17 No.2 2025)特集「糖尿病とサルコペニア・フレイル」
2025.10.31
        
- タイトル
- 月刊糖尿病156号(Vol.17 No.2 2025)
 特集「糖尿病とサルコペニア・フレイル」
- 書籍の種類
- 雑誌
- 企画編集
- 梅垣宏行
- 出版社
- 株式会社医学出版
- 価格(税抜)
- 4,000円
- 発行月
- 2025年10月
- 判型/頁
- A4変型判、 全頁カラー/72頁
- ISBN
- 978-4-287-82153-4

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人口の高齢化の進行とともに高齢の糖尿病患者が増加している.糖尿病には,サルコペニア・フレイルが合併しやすく,高齢糖尿病患者において重要な健康課題であるといえる.サルコペニア・フレイルは,単なる老化現象ではなく,糖尿病の病態とも深く関連しており,要介護状態や死亡リスクの増加にもつながるため,早期からの介入が求められている.
糖尿病におけるサルコペニア・フレイルの発症には,インスリン抵抗性や慢性炎症,栄養不良なども関連する.サルコペニアの進行は基礎代謝の低下を招き,エネルギー消費量の減少により血糖コントロールを困難にする.また,筋力低下による転倒リスクの増加は骨折や寝たきり状態を引き起こし,生活の質(QOL)を著しく低下させる.こうした問題を防ぐためには,サルコペニア・フレイルの適切な評価と診断が不可欠である.早期にこれらの状態を把握し,適切な介入を行うことによって,健康寿命の延伸につながることが期待される.サルコペニア・フレイルの発症・進行予防のためには,運動療法,栄養療法が重要であり,多職種連携などが重要となる.また,薬物療法における薬剤の選択にも配慮が必要である.
高齢糖尿病患者では,社会的フレイルやオーラルフレイル(口腔機能低下)も重要な課題である.孤独や社会的孤立はフレイルの進行を加速させるため,地域コミュニティとのつながりを強化することが求められる.また,歯周病や咀嚼機能の低下が食事摂取に影響を及ぼし,栄養状態の悪化を招くため,口腔ケアの重要性も見逃せない.
さらに,サルコペニア・フレイル対策は,個別の医療機関における対応だけでなく,地域医療との連携が不可欠である.医師,糖尿病療養指導士,看護師,管理栄養士,理学療法士,薬剤師など多職種が協力し,包括的なフレイル対策を講じることで,糖尿病患者の健康寿命を延ばし,QOLを向上させることが期待される.
以上のように,糖尿病におけるサルコペニア・フレイルの問題を取り上げることは,単に血糖コントロールを超えて,患者の健康寿命を延ばし,自立した生活を維持するためにきわめて重要である.今後,より多くの研究と臨床的アプローチが求められるとともに,医療従事者や患者が一体となってこの問題に取り組む必要がある.
梅垣宏行
(名古屋大学大学院 医学系研究科 地域在宅医療学・老年科学(老年内科)科長・教授)