日本腎臓学会が「CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation」を公開 日本糖尿病学会とも連携
CKDに対するSGLT2阻害薬の使用をアドバイス 日本糖尿病学会とも連携
日本腎臓学会は、日本糖尿病学会と連携して、「CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation」を策定した。
血糖降下薬として使用されているSGLT2阻害薬が、2型糖尿病を合併した慢性腎臓病(CKD)だけでなく、糖尿病非合併CKDに対しても、一部が使用可能になり、今後、CKDに対するSGLT2阻害薬の使用が増加することが予想されるのを受けたもの。
日本糖尿病学会が策定した「糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」も参考にしながら、CKD診療での活用を呼びかけている。
SGLT2阻害薬については、2 型糖尿病患者を対象とした⼤規模ランダム化⽐較試験で、⼼⾎管アウトカムのみならず、腎アウトカムに対する有効性が示されている。近年、糖尿病⾮合併CKD に対するダパグリフロジンやエンパグリフロジンの腎保護効果も⽰されており、糖尿病合併 CKD のみならず糖尿病⾮合併 CKDに対しても、⼀部の SGLT2 阻害薬が使⽤可能となっている。
日本腎臓学会の「CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation」では、SGLT2阻害薬のリスクとベネフィットを⼗分に勘案しながら、その腎保護効果を適正に活用することを呼びかけている。
主な内容
- SGLT2阻害薬は、糖尿病合併 CKD 患者では、アルブミン尿(タンパク尿)、腎機能に関係なく腎保護効果が期待されるため、クリニカルエビデンスを有する SGLT2 阻害薬の積極的な使⽤を考慮する。
なお、eGFR15 mL/min/1.73m² 未満では新規に開始しない、継続投与して 15mL/min/1.73m²未満となった場合には、副作⽤に注意しながら継続するとしている。
- 糖尿病⾮合併 CKD 患者では、タンパク尿陽性の CKD(IgA 腎症や巣状分節性⽷球体硬化症など)には、原疾患の治療に加えてクリニカルエビデンスを有する SGLT2 阻害薬の積極的な使⽤を考慮する。
なお、eGFR15 mL/min/1.73m² 未満では新規に開始しない、継続投与して 15 mL/min/1.73m²未満となった場合には、副作⽤に注意しながら継続する。
- 糖尿病合併・⾮合併にかかわらず、SGLT2 阻害薬投与後に eGFR の低下(eGFR initial dip)を認める場合があり、早期(2 週間〜2 ヶ⽉程度)に eGFR を評価することが望ましい。その後も eGFR が維持されていることを確認する。過度に eGFRが低下する場合は腎臓専⾨医への紹介を考慮する。
- ⾼⾎圧、貧⾎、脂質異常症、⾼尿酸⾎症を有する CKD に対する SGLT2 阻害薬の投与は有⽤である可能性がある。
- 糖尿病⾮合併 CKD 患者でも、⾷事摂取量の不⾜、栄養不良状態、飢餓状態、激しい筋⾁運動、過度のアルコール摂取、副腎機能不全、下垂体機能不全、シックデイなどの状況下では、低⾎糖や正常⾎糖ケトアシドーシスなどの代謝異常を⽣じる可能性があるため、SGLT2 阻害薬の中⽌を考慮する。⾷事摂取ができない⼿術が予定されている場合には、術前 3 ⽇前から休薬し、⾷事が⼗分摂取できるようになってから再開する。
- 利尿薬を使⽤している CKD 患者や⾎糖コントロールが極めて不良な糖尿病患者では、脱⽔や急性腎障害を来す可能性があるため注意が必要となる。
- ⾼齢 CKD 患者への投与の際には、サルコペニアやフレイルの発症・増悪に注意する。
- SGLT2 阻害薬は糖尿病⾮合併 CKD 患者でも尿路・性器感染症の発症・増悪が懸念されるため、投与後は注意を払う必要がある。
- 多発性嚢胞腎、ループス腎炎、ANCA 関連⾎管炎、免疫抑制療法中の患者へのSGLT2 阻害薬投与に関しては、現時点で⼗分なクリニカルエビデンスが存在しないため、これらの症例に対しては、適応について慎重に判断する。
- SGLT2 阻害薬は、⼼機能低下の有無にかかわらず、⼼・腎保護効果を⽰す可能性があるため、⼼不全を合併した CKD に対して投与を考慮するべきとしている。
なお、CKD 患者に対する SGLT2 阻害薬使⽤での注意点としては、(1) 低⾎糖、(2) 正常⾎糖ケトアシドーシス、(3) 体液量減少(脱⽔)、(4) 急性腎障害、(5) サルコペニア・フレイル、(6) 下肢切断・⾻折(7) 尿路・性器感染症、(8) 多発性嚢胞腎、ループス腎炎、ANCA 関連⾎管炎、免疫抑制療法中の患者を挙げている。
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