SGLT2阻害薬「フォシーガ」が心腎イベントの発現率を低下 慢性腎臓病(CKD)に起因する医療費を減少
CKDの早期のスクリーニングと治療開始が急務であることを強調
全世界で8億5,000万人が慢性腎臓病(CKD)に罹患し、有病率は上昇しているが、患者の多くは診断を受けていない。国際共同REVEAL-CKD試験のデータでは、試験対象国(米国、イタリア、ドイツ、日本、フランス)で、CKDの診断率は61.6%~95.5%と過小であることが示されている。
試験では、CKDと診断されていない、eGFR(推算糸球体濾過量)がCKDステージ3に相当する30mL/分/1.73m²以上60mL/分/1.73m²未満の患者について、各国固有の電子カルテおよび保険請求状況の分析を行った。
この分析から、患者は一度診断されれば、適切にCKDのモニタリングと疾患管理を受け、患者の実生活にベネフィットがもたらされることが示された。
CKDの診断を受けることの重要性は、年間の腎機能低下への影響、つまりeGFRスロープから明らかだとしている。REVEAL-CKD試験では、CKD診断前後のeGFR低下を評価し、その結果を2万7,000人の患者について米国TriNetXデータベースに記録した。
これらの患者のCKD診断前の2年間でのeGFR低下の中央値は-4.12(95%信頼区間[CI]-4.23、-4.02)であり、診断後の2年間でのeGFR低下は-0.30(95% CI -0.44、-0.14)だった。
「医療制度が十分に確立され、資金も潤沢な国でさえ、慢性腎臓病の過小診断率は憂慮すべき高さです。REVEAL-CKDから得られたこれらのデータは、患者がガイドラインに沿ったモニタリングおよび治療を受けられるよう、早期腎疾患の積極的なスクリーニングおよび診断の必要性を強調するものです。これにより、腎不全やその他の重篤な併存疾患への進行を予防または遅延させることができます」と、カナダのマニトバ大学医学部内科学教授であるNavdeep Tangri氏は述べている。
フォシーガが疾患進行を遅らせ心腎イベントの発現率を低下 医療費の33%を削減
患者のニーズに加えて、とくに腎不全や心腎関連イベントに進行した場合、CKDに関連する多額の医療費がかかる。INSIDE-CKD試験では、臨床イベントの発現率低下という直接的な医療費への効果を推計した。
その結果、SGLT2阻害薬「フォシーガ」(一般名:ダパグリフロジン)は、CKDの進行を遅らせ、心腎イベントの発現率を低下させることにより、医療資源の利用を減少させることが示された。
全23ヵ国の10万人の患者で、患者に標準治療に追加してフォシーガを併用投与した場合、標準治療単剤と比較して、医療費は33%減少し、3年間で約300億円(2億500万ドル)のコスト削減が実現すると推計している。
ASNで発表されたDAPA-CKDデータのもうひとつの分析では、フォシーガの投与により、2型糖尿病の有無にかかわらず、CKD患者のあらゆる原因による入院率が低下した。これらの結果は、患者の生活の質だけでなく、CKD治療に起因する全体的な医療負担や支出にも影響することを意味するとしている。
「ASN Kidney Week 2022で発表されたこれらのデータは、慢性腎臓病に関連する費用と患者の生活にかかる負担に関する包括的な見解を示しただけでなく、フォシーガがいかにこの負担を大幅に軽減し、あらゆる原因による入院率と医療資源利用を低下させるかも示しました。予防的治療戦略の必要性を強調しながら臨床診療ガイドラインの治療を完全に実行した場合、患者の腎臓有害事象、死亡および心血管アウトカムのリスクが改善するものと思われます」と、同社では述べている。
フォシーガ錠5mg フォシーガ錠10mg 添付文書 医療従事者向けガイド 患者向医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)
Cost-Effectiveness of Dapagliflozin as a Treatment for Chronic Kidney Disease: A Health-Economic Analysis of DAPA-CKD (Journal of the American Society of Nephrology 2022年11月)
Effects of Dapagliflozin in People without Diabetes and with Microalbuminuria (Journal of the American Society of Nephrology 2022年11月)