GLP-1RAが2型糖尿病患者のGERDリスク増大と関連

2025.07.31

 2型糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の処方が、胃食道逆流症(GERD)のリスク増大と関連していることを示すデータが報告された。GLP-1RAが処方されている患者では、SGLT2阻害薬(SGLT2i)が処方されている患者に比べて、GERDおよびGERDに伴う合併症の発症が有意に多く認められるという。全南大学校(韓国)のYunha Noh氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に7月15日掲載された。

 2型糖尿病および肥満の治療薬であるGLP-1RAは胃排出遅延作用を有しており、これが血糖上昇抑制や食欲低下に部分的に関与していると考えられている。しかし一方でこの作用は、理論的にはGERDのリスクとなり得る。とはいえ、GLP-1RAの処方とGERDとの関連を示す大規模な研究に基づくエビデンスは十分ではないことから、Noh氏らは英国の臨床データベース(Clinical Practice Research Datalink)を用いて、SGLT2iを実薬対照とするターゲット試験エミュレーション研究を実施し、GERDおよびGERD関連合併症の発症リスクを比較した。

 2013~2021年に、GLP-1RAまたはSGLT2iの新規処方が開始されていた18歳以上の成人2型糖尿病患者を2022年3月31日まで追跡し、主要評価項目であるGERDの発症、および副次評価項目であるGERD関連合併症の発症状況を把握。傾向スコアに基づき背景因子を精密層別化(fine stratification)して重み付けした上で、リスク差およびリスク比を算出した。

 GLP-1RAが新規処方されていた患者は2万4,708人、SGLT2iが新規処方されていた患者は8万9,096人だった。中央値3.0年の追跡で、SGLT2i群に対するGLP-1RA群のGERD発症リスク比は1.27(95%信頼区間1.14~1.42)であり、リスク差は100人当たり0.7だった。また、GERD関連合併症については、リスク比が1.55(同1.12~2.29)、リスク差は1,000人当たり0.8だった。

 著者らは、本研究の限界点として、GERDリスクに影響を及ぼし得る食習慣を含む、ライフスタイル関連因子が把握されていないことなどによる残余交絡が存在する可能性を挙げ、「追試による検証が必要」としている。その上で、「われわれの研究結果は、2型糖尿病患者に対するGLP-1RAの使用はSGLT2iを使用した場合に比較し、GERDの発症とその合併症のリスクを高めることを示唆している」と結論。また、「医師や患者はGLP-1RAがGERDリスクに影響を及ぼし得ることを認識しておくべき」とし、「医師は適切なタイミングで予防および治療介入を行う必要がある」と付け加えている。

 なお、2人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

(HealthDay News 2025年7月17日)

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