「がんを抱える糖尿病患者の支援の実際と今後の課題」 第25回日本糖尿病教育・看護学会レポート(5)

2020.10.05
第25回日本糖尿病教育・看護学会学術集会
シンポジウム2「がんを抱える糖尿病患者の支援の実際と今後の課題」
シンポジスト:能登洋(聖路加国際病院)、肥後直子(京都府立医科大学附属病院)、光木幸子(同志社女子大学看護学部)
座長:由浪有希子(東北大学病院)、細川舞(岩手県立大学看護学部)

がん治療と糖尿病のマネジメントは強く関連している

 日本人において糖尿病は、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスク上昇と関連し、糖尿病とがんの両疾患を抱えて生活している人は少なくない。

 糖尿病治療は、血糖をコントロールし、合併症を予防してQOLを維持することを目的とし、食事療法、運動療法、薬物療法が用いられるとともに、禁煙、節酒など生活習慣の改善が図られる。一方がん治療は、がんの根治、抑制、症状の緩和を目的とし、手術、化学療法、放射線治療の三大療法の他、ホルモン療法、分子標的薬などが用いられる。

 化学療法や放射線療法は、食思不振、味覚異常、悪心・嘔吐、下痢などの副作用による食事摂取量の低下や副腎皮質ステロイド剤の使用による血糖値の上昇を引き起こすため、糖尿病患者でもある場合には血糖コントロールに難渋することがある。糖尿病ではなくても、副腎皮質ステロイド剤の使用により血糖値が上昇してインスリン治療が必要となる、免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連副作用(immune-related Adverse Events:irAE)により1型糖尿病を発症することがあり、がん治療に加え糖尿病の治療を開始する患者も多い。このように近年では、がん治療と糖尿病のマネジメントは非常に強い関連がある。

 日常診療で「看護師さん、私、がんと言われてしまい治療法で悩んでいる」「吐き気がひどくて食べられない、インスリンをどうしたらいいかわからない」と相談されることもあるのではないだろうか。糖尿病とがん2つの疾患を抱える患者はどのように2つの疾患と向き合い生活しているのか、看護者はどのように患者を支援し、今後どのような支援ができるのか、本シンポジウムでは、がんを抱える糖尿病患者の支援について、医師、看護師、看護教育者それぞれの立場からの意見を交換し、がんを抱える糖尿病患者の現状と今後の課題について話し合われた。

糖尿病はがんのリスクを高め、がんは糖尿病のリスクを高める

シンポジスト1人目の能登洋氏は「糖尿病とがんとの相互関連性」と題して、糖尿病とがんとの関連についてエビデンスを挙げながら解説した。

 糖尿病患者の死因の1位はがんであり、特に肺がん、肝臓がん、膵臓がんが多く占めている。糖尿病に伴いがんリスクは1.2倍高まり、臓器別では肝臓が2倍、すい臓が1.9倍、大腸が1.4倍高まる。糖尿病と発がんの機序としては、高血糖、高インスリン血症、炎症が正常細胞のガン化、がんの増殖に作用している。また、インスリン療法はがんのリスクを増加させることはないことが明らかになっている。

 がんによって糖尿病リスクは1.35倍高まることが示されている。がんに伴う高血糖機序としては、がん細胞から産生されるサイトカインの一部やサルコペニアがインスリン抵抗性を高める。疼痛や精神的ストレス、ステロイド剤の副作用が高血糖を引き起こす。一方でがん患者では低血糖を生じることがある。

 糖尿病を持つがん患者は生命予後と術後予後が不良であり、感染症リスクが増加する。良好な血糖コントロールと予後の改善との関連は示されていない。

 能登氏は最後に「糖尿病患者に早くがん検診を受けていただくことが必要である」と呼び掛けた。

がんを抱える糖尿病患者の療養生活には、がんと糖尿病それぞれの看護師の連携と協働が必要

 シンポジスト2人目の肥後直子氏は「がんを抱える糖尿病患者の支援の実際」と題して、がんを患う糖尿病患者に対する支援について事例を挙げて解説し、特にエンドオブライフ期の患者に対しては、低血糖と高血糖を避けてQOLを保つこと、血糖コントロールに対する患者と家族の意向を確認し、その情報をがんと糖尿病それぞれに携わる医療者で共有し、包括的なケアプランを提供することが大切であるとまとめた。

 シンポジスト3人目の光木幸子氏は「がんを抱える糖尿病患者の療養とその看護の実際」と題して、糖尿病看護に専門性を持つ看護師とがん看護に専門性を持つ看護師それぞれに対するグループインタビュー、糖尿病に罹患した後にがんを発症した患者へのインタビューの結果と考察を解説した。それぞれの結果と考察から、がんを抱える糖尿病患者に対してはがんと糖尿病それぞれの看護師が連携し、協働して療養生活を支援する仕組みづくりが必要であり、日頃から必要に応じて連携できる相互理解と関係性を築くことが重要であるとまとめた。

 総合討論では、患者の意向を確認したうえでその意向を尊重して対応すること、その意向を医師、看護師など関係者で共有することの重要性を再確認した。

第25回日本糖尿病教育・看護学会レポート

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