【ADA2020】 1型糖尿病の発症がさらに遅れる 免疫抑制薬「テプリズマブ」の画期的な臨床試験が進行中

2020.06.19
 テプリズマブの第2相臨床試験の分析結果が追加され、テプリズマブ群では1型糖尿病の発症をさらに遅らせることが報告された。
第80回米国糖尿病学会(ADA2020)

1型糖尿病患者に希望 インスリン依存に至る期間がさらに1年延長

 テプリズマブの第2相臨床試験に関する新たな知見が、第80回米国糖尿病学会(ADA2020)で発表された。テプリズマブの第2相臨床試験に関しては、Kevan C. Herold教授(イエール大学医学部 免疫・内分泌学部)らが主導したTrialNet研究の主な結果は、昨年、医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に掲載され、第79回米国糖尿病学会(ADA2019)で発表されている。この時点では、1型糖尿病を発症するまでの期間の中央値は、テプリズマブを14日間静脈内投与した群では4年、プラセボを投与した群では2年だった。テプリズマブ群はプラセボ群に比べて1型糖尿病の発症を2年遅らせたと報告されていた。

 ADA2020では、このテプリズマブ群とプラセボ群の差が3年になったと報告された。試験データの分析を継続したところ、テプリズマブ群ではインスリン依存に至るまでの平均時間がさらに1年延長したものの、プラセボ群では変化がないことがわかった。

 1型糖尿病は生涯にわたる自己免疫疾患だ。1型糖尿病患者はインスリンを産生する膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が攻撃され破壊されてしまうことで、絶対的インスリン欠乏に至る。β細胞の破壊は免疫細胞の1つであるT細胞が過剰に活性化することで生じる。テプリズマブは、T細胞の表面にあるCD3を識別して結合することでT細胞の活性を弱める抗CD3モノクローナル抗体だ。米国のバイオ医薬品会社であるプロベンション・バイオ社が開発し、現在、第3相臨床試験(PROTECT試験)が行われている。テプリズマブは、米国食品医薬品局(FDA)のブレイクスルー・セラピー1、欧州医薬品庁(EMA)のプライオリティー・メディシンズ(PRIME)2制度の対象に指定されている。

 今回の分析では、テプリズマブ群はプラセボ群よりも高いインスリン分泌能およびCペプチド濃度を示し、1型糖尿病の平均的な進展に変化があることが示された。一方、プラセボ群では、この追跡期間中に1型糖尿病を発症するまでの期間に変化はなく、インスリン分泌およびCペプチド産生は低いままであった。これはプラセボ群ではβ細胞の破壊が引き起こされていることを示す。なお、この試験は、2つ以上の膵島関連自己抗体が陽性で、1型糖尿病を発症するリスクが高い人を対象に実施されている。

 TrailNet研究は、1型糖尿病研究に資金を提供している主要な国際機関である国際若年性糖尿病財団(JDRF)の支援を受けて実施された。JDRFは長年にわたってテプリズマブの研究を支援し、2017年にはJDRF1型糖尿病基金がプロベンション・バイオ社に株式投資している。

 JDRF理事長兼CEOのAaron J. Kowalski博士は「今回発表された試験結果が1型糖尿病患者に希望をもたらすと思うと胸が弾む。テプリズマブはインスリン依存に至るまでの期間を遅延するエビデンスが示された最初の疾患修飾薬だ。今回の報告は、1型糖尿病への理解が進み、疾患の予防と治療をさらに進めるための世界規模の取り組みにおいて大きな節目となる」と述べた。

1 ブレイクスルー・セラピーとは、重篤あるいは命にかかわる疾患に関する薬剤の開発や審査の促進を目的としたFDAの制度。
2 プライオリティー・メディシンズとは、アンメット・メディカル・ニーズを満たす薬剤の開発を促進させるEMAの制度。

New Findings from Groundbreaking Study Shows Extended Delay in Onset of Type 1 Diabetes

第80回米国糖尿病学会(ADA2020)ハイライト
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1型糖尿病の発症がさらに遅れる 免疫抑制薬「テプリズマブ」の画期的な臨床試験が進行中

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