【ADA2020】 糖尿病患者への心理的ケア 3人に1人が必要な支援を受けていない

2020.06.18
 デンマークの糖尿病患者と介護者を対象に実施した自己申告の調査研究から、糖尿病患者と介護者には心理的および医療以外の糖尿病治療を的確に受ける機会が必要であることが示された。
第80回米国糖尿病学会(ADA2020)

糖尿病患者には心理的ケアが必要

 デンマーク糖尿病協会の会員3万8,820人を対象にEメールを送信して実地された調査の報告が、6月12~16日にウェブ上で開催された第80回米国糖尿病学会(ADA2020)のバーチャル会議で発表された。Soren E. Skovlund上級科学研究員(ステノ糖尿病センター・ノース・デンマーク、オルボア大学病院およびオルボア大学臨床医学部)がバーチャル会議に出席し、調査結果を報告した。この調査は、デンマーク糖尿病協会、ステノ糖尿病センター・ノース・デンマーク、オルボア大学病院、オルボア大学が共同で実施した国民糖尿病調査「Life with Diabetes 2019」の一環として実施されたものだ。

 8,918人の糖尿病患者と761人の介護者から回答があった。回答者はデンマークのすべての地域に分布し、回答者の年齢と性別はデンマークの人口の特徴と類似していた。回答した糖尿病患者のうち、71%が2型糖尿病、26%が1型糖尿病だ。

重要ポイント
・ 回答者のほとんどは、概して質の高い糖尿病医療を受けていると報告したが、糖尿病患者の約20%が「ほとんどの時間で糖尿病が心理的に悪影響を及ぼしていると記述した。
・ 糖尿病患者の約19%が「糖尿病が日常生活の多くを占めている」と感じており、18%は心理的ケアが必要と感じているものの実際に心理的ケアを受けるまでには至っていない。
・ 糖尿病患者の約36%と介護者の21%が「糖尿病に関連する感情に対処するために必要な支援を受けていないと回答した。
・ 回答者の19%が「精神的側面に対処するための支援において大規模なシステム全体の改善が必要であると記述した。
・ 心理的ケアを必要としているとみられる女性は男性の2倍に上る(女性24%に対して男性12%)。

 回答を詳細に分析したところ、不本意に失業している人、2型糖尿病のためにインスリンを使用している人、複数の健康問題を抱えている人は、悲観的な心理的転帰のリスクが高いこともわかった。糖尿病患者は新しいテクノロジーを利用できること、プライマリー診療の良質なケアと健康全般への支援など、多面的なケアのギャップが原因で心理社会的影響に苦しんでいることが明らかになった。

 Soren E. Skovlund上級科学研究員は最後に次のようにまとめた。「影響を受けやすい集団を支援するための取り組みは多面的で、心理的ケアを含むべきだ。デンマークでは、糖尿病患者自身が治療効果を評価して報告する国家プログラムが進行中であり、日常的な糖尿病外来に糖尿病患者の心理的福祉と感情的側面を組み込んでいるが、現在、糖尿病関連の困難を抱えている人々が精神科の診断なしに心理療法を受けると金銭的補助はない。さらに、糖尿病のトレーニングを受けたメンタルヘルスの専門家は不足している。糖尿病の心理的影響とそれを緩和するために存在している機会(新しいテクノロジーへの最適なアクセス、より優れた個別化医療、自己管理支援サービスを含む)は、過小評価されるべきではない。糖尿病患者の心理社会的側面を統合することは、多くの糖尿病患者とその家族が長期にわたり健康と生活の質の転帰を改善するために必要な条件だ」。

原文
One in Three People with Diabetes Do Not Receive Support Needed to Deal with Emotional Aspects of Living with Diabetes

第80回米国糖尿病学会(ADA2020)ハイライト
糖尿病患者への心理的ケア 3人に1人が必要な支援を受けていない

1型糖尿病の発症がさらに遅れる 免疫抑制薬「テプリズマブ」の画期的な臨床試験が進行中

次世代インスリン自動注入システムの研究報告 血糖コントロールが改善、TIRはより良好に

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