【ADA2020】 次世代インスリン自動注入システムの研究報告 血糖コントロールが改善、TIRはより良好に

2020.06.22
 インスリンポンプと持続血糖モニター(CGM)の機能を併せ持ち高機能化した次世代インスリン自動注入システムは、現行システムより良好な血糖コントロールが可能であることが報告された。
第80回米国糖尿病学会(ADA2020)

次世代インスリン自動注入システムは血糖コントロールをさらに改善

 青少年および若年成人の1型糖尿病患者が血糖コントロールに苦労することは珍しくない。その多くは頻回インスリン注射(MDI)やインスリンポンプ、CGMを使用しているが、日常生活に負担をかけることなく、血糖コントロールをさらに改善する必要がある。最近は、血糖コントロールを改善するために、インスリンを自動で注入する(AID)システムを利用する人が急速に増えている。人工膵臓と呼ばれることもあるAIDシステムを利用することが、1型糖尿病治療の標準治療になりつつある。

 ADA2020のセッションで、次世代AIDシステムの有効性と安全性を検討した研究結果が報告された。小児および若年成人の1型糖尿病患者に次世代のAIDシステムを使用したところ、低血糖症の発現を増やすことなく、日中の血糖コントロールを改善できることが示された。

 この研究は、FLAIR(Fuzzy Logic Automated Insulin Regulation)研究と呼ばれ、メドトロニック社が開発した次世代AIDシステムであるアドバンスド・ハイブリッド・クローズド‐ループ(AHCL)システムの有効性と安全性を、米国で現在承認されているAIDシステムの1つであるMiniMedTM 670G(ハイブリッド・クローズド‐ループ:HCL)システムと初めて比較検討したものだ。AHCLシステムは、自動補正ボーラス投与機能を備えているほか、補正ボーラスの設定値など、HCLシステムに比べてアルゴリズムが改良されている。

 FLAIR研究は、米国の国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(NIDDK)などの協力を得て、14~29歳の1型糖尿病患者113例が7ヵ所の国際的な糖尿病センターで登録され、無作為交差試験として実施された。登録患者は、食事と運動を含む標準化されたインスリンポンプトレーニングを受けたうえで、AHCLシステムとHCLシステムをそれぞれ3ヵ月使用した。

結果のポイント
・ TIR(Time in Range:24時間中に血糖値が70~180mg/dLに収まった測定回数または時間)は、HCL群に比べAHCL群が良好だった。TIRはベースラインの57%から、AHCL群では67%、HCL群では63%に改善した。
・ TIRが70%を超えるという国際的なコンセンサス目標を達成した患者の数は、ベースラインと比較するとAHCL群は約3倍、HCL群は約2倍に増加した。
・ HbA1cの平均値はベースラインの7.9%から、AHCL群では7.4%、HCL群では7.6%に改善した。
・ AHCL群とHCL群ともに、レベル3の低血糖(重症低血糖)または糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)のイベントを増やすことなく、安全性があると評価された。
・ 利用満足度調査では、患者はHCLシステムよりもAHCLシステムを高く評価した。

 FLAIR研究の共同主任研究者であるRidhard Bergestal医師は最後に「青少年および若年成人の1型糖尿病患者は、従来から血糖コントロールを最適化することが最も困難な層だ。FLAIR研究は、インスリンポンプやCGMを使用しないインスリン注射など、あらゆる糖尿病治療を受けている患者が次世代AIDシステムであるAHCLシステムを使用することにメリットがあると示した。1型糖尿病患者を治療するための先端技術の将来には多くの関心が寄せられている。AHCLシステムは血糖コントロールに苦労している青年または若年成人に大きな希望を与える」とまとめた。

Next Generation Automatic Insulin Delivery System Improves Glycemic Control in People with Type 1 Diabetes

第80回米国糖尿病学会(ADA2020)ハイライト
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1型糖尿病の発症がさらに遅れる 免疫抑制薬「テプリズマブ」の画期的な臨床試験が進行中

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