CGMにより糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の管理を最適化 CGM使用により患者の転帰が改善 集中治療室の効率も向上

2025.04.01

 持続血糖モニター(CGM)の使用は、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を発症した患者の血糖値を正確に測定するのに有用であることが、米ミシガン大学医学部の研究で示された。CGMにより集中治療室(ICU)の過負荷を防げる可能性があるとしてる。

 「CGMは、DKAという負担のかかる疾患に対しても、患者の転帰とQOLを改善し、限りある医療リソースの利用を減らすために有用であることが示された。このツールを使用することで、必要な指穿刺の回数を減らし、管理を簡便化し、将来的にはDKAによるICU入院の頻度を減らすのに役立つ可能性がある」と、研究者は述べている。

成人DKAに対するCGMの正確性を確認
CGMによるDKA管理の転帰改善やICU入院の抑制などに期待

 持続血糖モニター(CGM)の使用は、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を発症した患者の血糖値を正確に測定するのに有用であることが、米ミシガン大学医学部の研究で示された。CGMにより集中治療室(ICU)の過負荷を防げる可能性があるとしてる。

 研究は、同大学救急医療部のNate Haas氏、Frederick Korley教授らによるもの。研究成果は、「CHEST Critical Care」に掲載された。

 DKAは、糖尿病患者で一般的にみられる重篤な急性合併症であり、高度のインスリン欠乏などがある場合に発症する。米国では、DKAによる年間の在院日数は50万日以上に上り、ICUに入院するケースも多く、医療費の負担は24億ドルに上ると推定されている。

 「DKAの死亡率は低いが、ICU入院が必要になることが多く、DKAによる死亡の相対リスクと、ICUでみられる他の疾患の死亡リスクのあいだに不一致がある。DKAを管理するために、治療指針として指先穿刺による頻繁な血糖値測定が必要となり、通常は1時間に1回行われるが、看護師などの負担は大きく、患者のQOLの低下にもつながる」と、Haas氏は言う。

 一方、CGMが糖尿病患者の血糖管理を改善するのに有用で、費用対効果も高いことを示した報告は増えているものの、DKAを発症した患者に使用したときのベネフィットについては不明の点があった。

 CGMは、連続して皮下の間質液のグルコース濃度を測定するものであるに対し、DKAは高血糖、ケトーシス、代謝性アシドーシスを特徴としており、重度の脱水状態を呈する場合があり、CGMによるモニタリングが正確であるかはよく分かっていなかった。

 そこで研究グループは、DKA患者20人(平均年齢 42歳、女性 60%、1型糖尿病 70%)を対象に2023年3月~8月に、5分ごとに測定するCGM(Dexcom G6 CGMシステム)の使用と、標準的な1時間ごとの指先穿刺による検査を同時に行い、測定された血糖値などを比較した。

 その結果、334回の測定結果を比較した結果、CGMはDKA患者に使用した場合でも正確であることが示された。さらに、CGMは血糖値の低下をより迅速に特定でき、1時間ごとの指穿刺による標準検査と臨床的に同等だった。

 クラーク誤差グリッド分析では、測定値の97.0%がAゾーン(もっとも望ましい範囲)とBゾーンの範囲内におさまり、Bland-Altman分析では、CGMと標準検査の測定値の平均差は26.0mg/dLで[95%誤差許容範囲 マイナス70.7~122.6]、平均絶対相対差は28.6%[95%CI 26.5~30.6%]だった。CGMの使用により、血糖値<150mg/dLの最初の発生は(n=14)、標準検査よりも28.9分早く検出された。

 「CGMは、DKAという負担のかかる疾患に対しても、患者の転帰とQOLを改善し、限りある医療リソースの利用を減らすために有用であることが示された。このツールを使用することで、必要な指穿刺の回数を減らし、管理を簡便化し、将来的にはDKAによるICU入院の頻度を減らすのに役立つ可能性がある」と、Haas氏は述べている。

 研究グループは現在、CGMの使用によるDKA管理についてさらに評価するため、全国の協力者とともに臨床試験の準備に取り組んでいるという。

 「臨床試験を行う場合、内分泌代謝、救急医療、看護学、生物統計学など、多分野に及ぶ大規模な学際的グループが必要になる。今後の研究が、ICUの混雑緩和と患者の転帰改善に役立つことを期待している」としている。

Continuous glucose monitors can optimize diabetic ketoacidosis management (ミシガン大学医学部 2025年3月18日)
Analytical Accuracy of a Continuous Glucose Monitor in Adult Diabetic Ketoacidosis (CHEST Critical Care 2025年3月)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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