新規2型糖尿病患者は肥満関連がんのリスクが高い 男性で48%増、女性で24%増 肝臓がんリスクは男性で4倍
2型糖尿病と新規に診断された患者は、肥満関連がん(ORCs:obesity-related cancers)の発症リスクが高いことが、UKバイオバンクに登録された2型糖尿病患者などを対象とした研究で示された。
2型糖尿病の新規発症例の肥満関連がんリスクは、BMI(体格指数)とは無関係に、男性で48%増加、女性で24%増加した。

新規2型糖尿病患者の肥満関連がんリスクを調査
大腸がんは男性で27%増、女性で34%増
肝臓がんは男性で4倍、女性で5倍に
2型糖尿病と新規に診断された患者は、肥満関連がん(ORCs:obesity-related cancers)の発症リスクが高いことが、UKバイオバンクに登録された2型糖尿病患者などを対象とした研究で示された。
研究は、英マンチェスター大学健康科学部のOwen Tipping氏、英国国立健康研究所(NIHR)マンチェスター生物医学研究センターのAndrew Renehan教授らによるもの。詳細は、5月にスペイン・マラガで開催される第32回欧州肥満学会議(ECO 2025)で発表される予定としている。
過去の研究でも、2型糖尿病と肥満関連がんの高リスクとの関連について報告されているが、肥満に関連する相互リスク要因があることや、2型糖尿病の既往に関連する不死時間バイアス、2つの疾患の同時診断などによる時間検出バイアスなどが影響し、2つの疾患の関連の因果関係には不明の点があった。
そこで研究グループは、約50万人が参加しているUKバイオバンクに登録された、新規発症の2型糖尿病患者と、BMI(体格指数)・年齢・性別でマッチングした非糖尿病患者を、1対3の比率で割り当て比較するマッチングコホート対照研究を実施した。計2万3,750人の2型糖尿病患者と7万1,123人の対照群がマッチングされた。新規2型糖尿病は、初回報告日にインスリン非依存型糖尿病と診断された症例とした。
追跡期間の中央値5年間で、2型糖尿病患者のうち2,431件の新規の原発性がんが確認され、マッチングされた対照群では5,184件の新規の原発性がんが確認された。
解析した結果、2型糖尿病の新規発症例では、肥満関連がんリスクが、男性で48%増加、女性で24%増加した。これらの関連はBMI(体格指数)とは無関係に示された。
さらに、新規発症の2型糖尿病患者では、大腸がんリスクが男性で27%増加、女性で34%増加し、膵臓がんリスクが男性で74%増加、女性でほぼ2倍に増加した。肝臓がんリスクは、男性でほぼ4倍に、女性でほぼ5倍に、それぞれ増加した。
一方で、女性の子宮内膜がん、閉経後乳がんなど、いくつかの部位特異的な肥満関連がんについては関連がみられなかった。
なお、主要評価項目は、肥満関連がんとされる肝臓がん、膵臓がん、腸がん、閉経後乳がん、子宮内膜がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、多発性骨髄腫、胆嚢、甲状腺がん、髄膜腫、卵巣がんの診断とした。
研究グループは、症例数が許す限り部位特異的ながんのリスクも調査した。統計モデルを使用し、2型糖尿病患者のがん転帰リスクの増加を解析し、アルコール摂取、喫煙、医療監視の強化による糖尿病診断直後のがん診断の急増を考慮し調整した。
「現時点では、男性と女性でのこのうような違いが、ホルモンレベル、インスリン感受性、体脂肪組成などの性別に依存する生物学的経路によるものなのか、それともUKバイオバンク内で男女で発見されたがん診断数の単なる偶然の違いによるものなのかは不明だ」と、研究者は述べている。
「この分野の過去の研究で示された主要なバイアスと交絡因子(BMI、喫煙、アルコール、検出時期のバイアスによる調整)を考慮したうえで、我々の調査結果は、新規発症の2型糖尿病は、部位特異的な肥満関連がんの一部と関連していることを示している。ただし、すべてのがんと関連しているわけではない。2型糖尿病が肥満関連がんに影響を及ぼす経路について、さらなる調査が必要だ」としている。
研究グループはさらに、「高インスリン血症、高血糖症、慢性炎症など、いくつかのメカニズムについて調査中であり、このうち高インスリン血症は、がん細胞の成長と増殖を刺激する能力があることから、がん発症のメカニズムとして有力とみている」と付け加えている。
関連情報
第32回欧州肥満学会議 (ECO 2025)
Study of UK biobank reveals link between new-onset type 2 diabetes and some but not all obesity-related cancers (欧州肥満学会 2025年3月22日)