加熱式たばこの糖尿病発症リスクは紙巻きたばこと同程度 日本人勤労者のコホート研究 JIHS

2026.04.24
国立健康危機管理研究機構(JIHS)臨床研究センターらの研究グループは、定期健康診断を受診した勤労者を対象に、加熱式たばこと 2 型糖尿病発症との関連を疫学的に分析し、その結果を報告した。加熱式たばこ使用者は、非喫煙者に比べて糖尿病発症リスクが 1.6 倍高く、紙巻きたばこ使用者と比べてもリスク低下は認められなかった。

 日本では喫煙率が低下している一方で、加熱式たばこの普及が急速に進んでおり、特に勤労者層での使用増加が指摘されている。また、日本の喫煙者の約半数が加熱式たばこ(紙巻きたばことの併用を含む)を使用していると報告されている。加熱式たばこは紙巻きたばこより健康リスクが低いと期待されているが、その科学的根拠は限定的であり、健康影響に関する疫学データの蓄積が求められている。

 紙巻きたばこは 2 型糖尿病の確立した危険因子であり、非喫煙者と比べて発症リスクが 30~40%高いことが知られている。加熱式たばこについても、インスリン抵抗性や膵β細胞機能障害、さらにその背景にある酸化ストレスや炎症を引き起こす可能性が指摘されている。日本国内の横断研究では、加熱式たばこ使用者に糖尿病や前糖尿病が多いことが報告されており、前向き研究による検証が求められていた。

 そこで研究グループは、定期健康診断を受診した勤労者を対象に、加熱式たばこと 2 型糖尿病発症との関連を疫学的に分析した。たばこ使用状況は、「非喫煙」「過去喫煙」「紙巻きたばこ」「加熱式たばこ」「紙巻きたばこと加熱式たばこの併用」に分類した。糖尿病の発症は、血糖値、HbA1c、糖尿病治療歴に基づいて定義した。年齢、性別、職位、婚姻状況、糖尿病の家族歴、残業時間、夜勤・交代制勤務、飲酒習慣、睡眠時間、食生活などの潜在的な交絡要因を統計的に調整したうえで、加熱式たばこ使用と糖尿病との関連を評価した。

 調査開始時に糖尿病を有していなかった約 2 万 9,000 人を対象に、平均 4.8 年(範囲:0.1~7.0 年)追跡した結果、2,141 人が糖尿病を発症した。非喫煙者と比べて、加熱式たばこ使用者の調整済み糖尿病発症リスクは 1.61 倍(95%CI 1.39~1.86)、加熱式たばこと紙巻きたばこの併用者では 1.76 倍(95%CI 1.48~2.09)と高いことが示された。また、加熱式たばこの使用量が多いほど糖尿病の発症リスクが高くなる傾向も認められた。さらに、喫煙歴を有する者に限定した解析では、加熱式たばこ使用者の糖尿病発症リスクは紙巻きたばこ喫煙者と同程度であった(HR 1.01、95%CI 0.86~1.18)。

 以上の結果より、加熱式たばこ使用者の糖尿病発症リスクは非喫煙者より高いこと、また紙巻きたばこから加熱式たばこへの切り替えや両製品の併用は、糖尿病発症リスクの低下に関連しないことが示された。なお、本研究集団では加熱式たばこ使用者の多くが過去に紙巻きたばこを使用していたことから、これらの結果は過去の喫煙の残存影響を反映している可能性がある。

 研究グループは「今後は追跡期間を延長し、紙巻きたばこ使用歴のない人における加熱式たばこの新規使用や、紙巻きたばこからの切り替えが長期的な糖尿病の発症に及ぼす影響を検討する予定」と述べている。

 本研究は、国立健康危機管理研究機構(JIHS)臨床研究センター疫学・予防研究部長 溝上哲也氏、胡歓客員研究員(労働安全衛生総合研究所研究員)らの研究グループにより実施され、研究成果は2026年4月8日付で「American Journal of Preventive Medicine」オンライン版にて早期公開された。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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