食物繊維の摂取により2型糖尿病患者の肥満リスクが減少 男性・高齢者で関連 糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)

2025.03.25

 日本人の2型糖尿病の外来患者を対象に行った調査により、食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった。研究は、新潟大学や糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)などによるもの。

 食物繊維の摂取量が多いことは、男性や高齢者(59~89歳)で肥満リスクの低下と関連することが示された。全参加者を多変量解析した結果、食物繊維の摂取量が多いと肥満リスクは41%低下した。

 「肥満をより効果的に管理するために、食物繊維を豊富に含む多様な食品の摂取を促進する、的を絞った公衆衛生イニシアチブが必要」と、研究グループでは強調している。

食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下 男性や高齢者で関連

 日本人の2型糖尿病の外来患者を対象に行った調査で、食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった。

 食物繊維の摂取量が多いことは、男性や高齢者(59~89歳)の群で肥満リスクの低下と関連することが示された。男性では食物繊維の摂取量が多いほど、身体活動レベルが高い、喫煙率が低いなど、ライフスタイルが健康的であることも分かった。

 研究は、新潟大学などが、糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)のデータベースに登録された30~89歳の外来の2型糖尿病患者1,565人を解析したもの。肥満はBMI≥25kg/m²と定義した。

 「肥満をより効果的に管理するために、食物繊維を豊富に含む多様な食品の摂取を促進する、的を絞った公衆衛生イニシアチブが必要」と、研究グループでは強調している。

 研究は、新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野のEfrem d’Avila Ferreira氏、曽根博仁教授、一般社団法人 糖尿病データマネジメント研究会らによるもの。研究成果は、「Public Health Nutrition」に掲載された。

日本人の2型糖尿病の外来患者を調査
糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)データを解析

 肥満対策として食物繊維を摂取するベネフィットは広く認識されているが、食物繊維が体重などに与える影響については、性別や年齢層などにもとづくより詳しい調査が求められている。

 そこで研究グループは、日本人の2型糖尿病患者集団を性別・年齢別に層別化し、食物繊維摂取量と肥満との関連を検討した。さらに、この関連に寄与する可能性のある生活および食習慣についても検討を行った。

 糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)のデータを用いて、2014年12月~2019年12月に、JDDMに参加した日本の糖尿病専門医クリニックで治療を受けた30~89歳の外来患者1,565人を対象に解析した(平均年齢 62.3±11.6歳、男性 63.1%)。

 その結果、1日の食物繊維の摂取量は、男性 11.6g、女性 12.7gで、男性は穀物の摂取量が、女性は野菜、果物、大豆・大豆製品の摂取量がそれぞれ多かった。

 性別・年齢、ライフスタイル要因、薬物療法、身体活動、主要栄養素の摂取量を調整した多変量解析を行った結果、食物繊維の摂取量が多いほど、肥満リスクが低下することが示された[オッズ比OR 0.591、95%信頼区間 0.439~0.795、P trend=0.002]。

 生活習慣の傾向としては、食物繊維とナトリウムの摂取量は年齢とともに増加し、高齢者は野菜、果物、大豆・大豆製品の摂取量が多く、穀物の摂取量は減少することが示された。男性は女性よりもアルコール消費量、喫煙率、身体活動量が多かった。

 食物繊維摂取量ともっとも強く相関する上位3つの食品群は、全参加者で、野菜[r=0.814]、果物[r=0.512]、大豆・大豆製品[r=0.502]だった。穀物摂取量と食物繊維の摂取量との相関はみられなかった[r=0.211]。食物繊維摂取量ともっとも強く相関するビタミンとミネラルは、葉酸[r=0.931]、カリウム[r=0.879]、ビタミンC[r= 0.866]だった。

 さらに、食物繊維摂取量が多い人は、すべての年齢層で身体活動が高く、第2三分位[59~68歳]でもっとも強い関連がみられた[P<0.001]。男性では、食物繊維摂取量が多いほど健康的な生活習慣がみられ、喫煙率が有意に低く[P<0.001]、身体活動レベルも高かった[P<0.001]。女性では、食物繊維摂取量が多いと身体活動が増加し[P=0.022]、喫煙率との関連はみられなかった[P= 0.068]。

男性は食物繊維の増加と健康的な生活との関連が強い?

 研究グループは研究について、「2型糖尿病の日本人を対象とした研究により、食物繊維の摂取量が多いことと肥満リスクが低いことのあいだに関連があることが分かった。性差が認められ、男性でのみ食物繊維の摂取量が多いことと肥満オッズが低いことのあいだに関連がみられた。これは、男性では食物繊維の摂取量の増加と健康的なライフスタイルとの関連性が強いためと考えられる」としている。

 「参加者は日本各地の診療所から募集されたため、多様で異質なサンプルになった。さまざまな年齢の男女を対象に、ライフスタイルや食事要因の調整なども行い、食品群に関するデータも収集した」。

 「肥満を効果的に管理するために、多様な食物繊維を豊富に含む食品を推進する、的を絞った公衆衛生イニシアチブの必要とされている。多様な集団での食物繊維と肥満の関係に影響を与える性別および年齢特有の要因を理解するには、さらなる研究が必要」としている。

新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野
一般社団法人 糖尿病データマネジメント研究会
Demographic and dietary determinants of the association between dietary fibre intake and obesity in Japanese adults with type 2 diabetes: a cross-sectional study (JDDM 78) (Public Health Nutrition 2025年2月4日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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