GLP-1受容体作動薬の腎保護効果はDPP-4阻害薬を上回る 糖尿病関連腎臓病の患者で比較 長期的な転帰がより良好
2型糖尿病と関連する慢性腎臓病(CKD)の患者で、GLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬と比較して、長期的な転帰がより良好であるという調査結果を、米テキサス大学医療センターが発表した。
GLP-1受容体作動薬は、糖尿病に関連するCKDについて、入院、全死亡、腎疾患の進行の減少という3点で、DPP-4阻害薬に比べてより優れていることが示された。

糖尿病患者と関連する慢性腎臓病(CKD)の患者でGLP-1受容体作動薬は転帰がより良好 DPP-4阻害薬と比較
研究は、同大学サウスウェスタン医療センター内分泌科のShuyao Zhang氏、内科のIshak A. Mansi教授、公衆衛生大学院のIldiko Lingvay教授らによるもの。研究成果は、「Nature Communications」に掲載された。
「血糖管理でのGLP-1受容体作動薬の有用性はすでによく知られているが、今回の研究では新たに、CKDハイリスク患者でのGLP-1受容体作動薬の腎保護効果を裏付けるエビデンスが得られた」と、Zhang氏は述べている。
米退役軍人保健局(VHA)の病院や診療所の全国的な医療データを用いた今回の研究は、臨床試験を模倣する研究として設計された。
研究グループは、腎機能低下が中等度(eGFR 45mL/分/1.73m²未満)以上に進行したCKDを有する35歳以上の2型糖尿病患者のうち、GLP-1受容体作動薬あるいはDPP-4阻害薬で治療されていた9万1,132人から、傾向スコアマッチングにより背景因子の一致する各群1万6,076人から成る2群を設定。
この2群はベースライン時点で、平均年齢(GLP-1受容体作動薬群 71.9歳、DPP-4阻害薬群 71.8歳)、男性の割合(両群とも95%)、BMI(同 33.5)、HbA1c(同 8.0%)、および併発症や治療薬なども含めて、背景因子がよく一致していた。
主要評価項目として急性期医療(救急外来の受診・入院など)の利用率、副次評価項目として全死亡および心血管イベントの発生率をそれぞれ事前に設定した。このほか、CKD進行リスク(血清クレアチニンの倍化、CKDステージ5への進行で構成される複合アウトカム)も事後解析として評価した。
その結果、2.2±1.9年の追跡期間に、GLP-1受容体作動薬を開始した患者では、DPP-4阻害薬と比較して、急性期医療の利用(10%低下)、全死亡(16%低下)、CKD進行リスク(36%低下)が大幅に低いことが示された。
1人1年あたりの急性期医療利用率は、GLP-1受容体作動薬群が1.52±4.8%、DPP-4阻害薬群は1.67±4.4%となった[回帰係数β =−0.15、P=0.004]。
また、全死亡は同順に17.7%、20.5%に発生していて、やはりGLP-1受容体作動薬群の方が少なかった[オッズ比(OR) 0.84、95%信頼区間0.79~0.89、P<0.001]。
CKD進行についても2.23%および3.46%で、GLP-1受容体作動薬群の方が少なかった[OR 0.64、同 0.56~0.73、P<0.001]。追跡期間中の微量アルブミン尿の事後解析でも、GLP-1受容体作動薬群の方が比較的低いレベルになったが、この解析はデータ欠損率が大きいという限界がある。心血管イベントに関しては有意差がなかった[OR 0.98、同 0.92~1.06、P=0.66]。
「糖尿病や慢性腎臓病の患者は、合併症リスクが非常に高く、入院も頻繁に起こる。しかし、この集団は、臨床試験に参加したり、効果が実証されている薬による治療を受ける可能性が低い」と、Lingvay氏は述べている。
「今回の研究結果は、GLP-1受容体作動薬の使用が、心血管イベントの減少、腎臓病の進行の抑制、医療費の削減につながることを示している。これらの結果は、この高リスク集団でのこのクラスの薬剤の幅広いベネフィットを裏付けるものだ」。
「2型糖尿病によるCKDおよび末期腎疾患の患者は、低血糖、感染症、心血管イベントなどの合併症にもかかりやすい傾向がある。これらのリスクを管理し、高額な急性治療入院の必要性を減らすことは課題になっている」としている。
研究グループは、今回の研究結果は糖尿病の臨床に影響を与えるもので、今後の研究次第では、糖尿病にともなうCKDの包括的治療アプローチの一部として、GLP-1受容体作動薬を組み込んだ新しい診療ガイドラインが策定される可能性があると指摘している。
なお、今回の研究の限界点として、遡及的な研究であり服薬遵守を検証できなかったことなどを挙げている。
Popular diabetes/weight-loss drugs show additional benefit (テキサス大学サウスウェスタン医療センター 2025年2月10日)
Healthcare utilization, mortality, and cardiovascular events following GLP1-RA initiation in chronic kidney disease (Nature Communications 2024年12月5日)