糖尿病のアドボカシー活動 ~正しい理解の浸透と共感力の高みを目指して~
糖尿病とともに歩む人が抱えるさまざまなスティグマの存在やこれを克服するためのアドボカシー活動が注目されています。長く糖尿病の支援活動に携わり、日本糖尿病協会の理事として日本糖尿病協会・日本糖尿病学会の合同アドボカシー委員を務めておられる津村和大先生にお話を伺いました。
日本糖尿病協会 理事
神奈川県糖尿病協会 会長
川崎市立川崎病院 病態栄養治療部長
津村和大 先生
※この記事は「糖尿病リソースガイド」が制作し、株式会社三和化学研究所発行『Precious Voice Vol.1』に掲載されました。
スティグマ(stigma)とアドボカシー(advocacy)
スティグマとは、特定の属性や特徴に対して偏見を抱き、否定的な評価を下してその判断を固定化する(負の烙印を押す)こと。スティグマの存在を認識して取り除く活動は、健全な社会を創るための権利擁護や政策提言を意味するアドボカシーの1つである。
Q. 近年、糖尿病のスティグマに対する関心が高まり、その克服に向けたアドボカシー活動が広がっています。その背景や経緯を教えてください。
A 近年の糖尿病医療の飛躍的な進歩、とりわけ新しい検査技術や薬物治療の普及によって、負担感を軽減しながら血糖マネジメントの質を高めることが可能になり、糖尿病合併症の予防と平均余命の延伸を実現してきました。そして今、私たちは「糖尿病とともに歩むすべての人が幸せな人生を全うできる社会」を目指す新たなステージの入口に立っています。この理想的な社会を目指す上で障壁となっている事柄の1つが、糖尿病のスティ グマです。
スティグマは、糖尿病の疾患概念が提唱されてから現在に至るまで、常に存在していたのでしょう。それでも、糖尿病とともに歩む人たちは長い間、このスティグマに耐えてきました。表には1950年代から80年代までの代表的なアドボカシー活動を抜粋していますが、これら歩みの背景には、社会的アイデンティティを不当に侵害されて数多くの不利益を被ってきた厳しい現実があるのです。