2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム ~病態に応じた薬剤選択で最善の糖尿病診療をめざす~
2022年9月、日本糖尿病学会よりコンセンサスステートメント「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」*1が発表されました。最新のエビデンスと処方実態を反映した我が国初のアルゴリズムとして、話題を集めています。同学会「コンセンサスステートメント策定に関する委員会」で委員長を務めておられる山内敏正先生に、お話を伺いました。
東京大学大学院医学系研究科
代謝・栄養病態学 教授
川崎市立川崎病院 病態栄養治療部長
山内敏正 先生
※この記事は「糖尿病リソースガイド」が制作し、株式会社三和化学研究所発行『Precious Voice Vol.2』に掲載されました。
Q.今回、どのような経緯でアルゴリズムを作成するに至ったのでしょうか。
A 2型糖尿病の治療アルゴリズムは、欧米から毎年のように出ています。しかし欧米とアジアでは、肥満の程度も病態も大きく異なります。また世界の糖尿病人口の1/3はアジアが占めています。そのため、アジアの一員である日本がアルゴリズムを提示することは、非常に意義があると考えられました。
厚生労働省のNDB(National Database)*2により、糖尿病治療薬の処方実態が詳細に解析できるようになったことも大きなポイントです。実際に解析してみると、DPP-4阻害薬の処方が最も多く、次いでビグアナイド薬(BG薬)、SGLT2阻害薬の順でした。これを年齢別にみると、年齢が上がるにつれDPP-4阻害薬が選択される傾向が強くなるのに対し、BG薬やSGLT2阻害薬の割合は直線的に減っていました。後者2剤については、当学会から高齢者での使用に関する注意喚起が出ており、それが浸透した結果ともいえます。しかし一方で、当学会の教育認定施設と非認定施設における解析では、非認定施設の約4割がBG薬を1例も処方せず、全例にDPP-4阻害薬を処方しており、病態に応じた処方がされていない可能性が推察されました。
こうした背景から、非専門の先生方にも使いやすく、かつ病態に合わせた処方ができるアルゴリズムを作成することになりました。
*2 厚生労働省が提供するレセプト情報・特定健診等情報データベース。本ア ルゴリズム作成にあたっては、2014年度下半期~2017年度に登録された 100万人以上の2型糖尿病患者のデータが解析された。