糖尿病患者の足を守るために ~リスクのある足を早期に発見し、発症・再発・進行を防ぐ~
糖尿病足病変は重症化すれば下肢切断に至るリスクが高く、早期発見・治療が重要です。
プライマリケアにおいて、いかに発症や再発を防ぐべきか、わが国初の「足と糖尿病の総合病院」下北沢病院で、糖尿病患者の足と全身の健康をチームで支えている富田益臣先生にお話を伺いました。
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医療法人社団青泉会 下北沢病院
足病総合センター/糖尿病センター
糖尿病センター センター長
富田益臣 先生
※この記事は「糖尿病リソースガイド」が制作し、株式会社三和化学研究所発行『Precious Voice no.5』に掲載されました。
Q. はじめに、糖尿病足病変を取り巻く状況について教えてください。
糖尿病足病変は世界で問題になっており、その年間発症率は2.2 ~ 5.9%と報告されています1)。患者の4人に1人が生涯において足潰瘍を発症し2)、糖尿病足潰瘍の下肢切断率は7 ~ 20%にのぼるといわれています3)。実際、下肢切断の7割は糖尿病患者で行われており、その85%は先行して足潰瘍を発症していました4)。日本も決して例外ではなく、糖尿病患者329万人(「平成29年患者調査」厚生労働省)のうち約13万人が足潰瘍を発症し、約1万人が下肢切断に至っていると考えられます。今後さらに高齢化が進み、糖尿病や透析の患者が増えれば、足病変患者はもっと増える可能性があります。
糖尿病足病変は、血糖だけでなく傷や変形、血流、靴や装具まで広い領域が関与しており、包括する診療科がないことが問題です。海外では様々な診療科の足の知識を兼ね備えた足病医が存在しますが、日本には足病医は存在しません。ニーズは高いのに満たされていないという点で、日本における足病変は “unmet medical needs”な領域といえるでしょう。今のところ、足の領域は血管外科や整形外科、皮膚科など、外科系の医療者が重症例を中心に診ていることがほとんどです。
しかしこれからは、糖尿病内科や腎臓内科などの内科系、それもプライマリケアを担う医療者が、早期の段階から足の問題に関わっていく必要があると考えます。