糖尿病透析患者の血糖管理 「透析患者の糖尿病治療ガイド2025」改訂をふまえて
「透析患者の糖尿病治療ガイド」が約12年ぶりに改訂されました*。新しい治療薬やデバイスの登場、 様々なエビデンスの蓄積により、透析導入後の血糖管理の重要性が今改めて注目されています。 本治療ガイドの改訂に携わった豊田雅夫先生と林哲範先生に、糖尿病透析患者における血糖管理について、改訂内容もふまえてお話を伺いました。
* 一般社団法人日本透析医学会 透析患者の糖尿病治療ガイド改訂ワーキンググループ (編): 透析患者の糖尿病治療ガイド2025. 医学図書出版, 東京, 2025.

東海大学 医学部内科学系
腎内分泌代謝内科学 教授
豊田雅夫 先生

北里大学看護学部
基礎看護学 教授
林 哲範 先生
※この記事は「糖尿病リソースガイド」が制作し、株式会社三和化学研究所発行『Precious Voice no.9』に掲載されました。
Q. 新しい治療ガイドの「Ⅰ.血糖管理」について、主な改訂内容を教えて下さい。
豊田 今回の改訂は完全に新しくするというより、前回の内容を深めたり強調したりする作業が中心となりました。「Ⅰ.血糖管理」は全部で6項目あり、大きく2つのテーマに取り組みました。1つは血糖管理の意義の再確認です。糖尿病透析患者は栄養障害やフレイルを有する割合が高く、併存疾患も多いうえ、腎機能低下のため糖尿病治療薬の血中濃度も複雑に変わり、血糖変動の影響を受けやすくなっています。そのため厳格な血糖管理にこだわるより、むしろ低血糖防止に十分注意し、生命予後にも配慮しながら、柔軟に治療目標を設定する必要があることを強調しました。いわば血糖管理の個別化です。
もう1つのテーマは血糖管理指標です。CGM(持続グルコース測定)の登場でより詳細な血糖の動きが把握できるようになり、透析中の低血糖や透析後の高血糖など、 糖尿病透析患者における血糖変動の特徴がわかってきました。新しい治療ガイドではこの血糖変動に着目し、血糖値・HbA1c値・グリコアルブミン(GA)値の使い分けを改めて整理しました。そして、いかに低血糖を回避しつつ高血糖も抑制するか、安全かつ持続可能な血糖コントロールをめざした戦略の必要性を強調しました。同時に、いつ・どんなタイミングで測定するかにも言及し、 より実践的な内容に近づけました。