糖尿病女性のホルモン補充療法は経口よりも経皮製剤が安全

2025.10.06
2型糖尿病の女性のホルモン補充療法(HRT)では、経口薬よりも経皮製剤の方が心血管疾患のリスクが低いとする研究結果が、欧州糖尿病学会年次総会(EASD2025、9月15~19日、オーストリア・ウィーン)で発表された。英リバプール大学のMatthew Anson氏らが、世界各地の医療機関の電子医療記録を統合したリアルワールドのデータベース(TriNetX)を用いた、後ろ向きコホート研究の結果として報告した。

 解析に用いられたデータベースには、経皮製剤によるHRT施行における2型糖尿病の有無の比較(コホート1〔8,316人〕)、2型糖尿病患者における経皮HRT施行の有無の比較(コホート2〔8,354人〕)、2型糖尿病患者における経口HRTと経皮HRTの比較(コホート3〔8,316人〕)という、3種類のコホートのデータが含まれていた。いずれも新規HRT施行患者を対象として、肺塞栓症、深部静脈血栓症、虚血性心疾患、脳梗塞、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がんのリスクが比較検討された。平均年齢は59.4±10.4歳で、追跡期間は1,523±568~1,713±332日の範囲だった。

 コホート1では、2型糖尿病患者の経皮HRTは、2型糖尿病でない患者での経皮HRTに比べて、深部静脈血栓症(ハザード比〔HR〕1.90〔95%信頼区間1.35~2.68〕)、虚血性心疾患(HR1.77〔同1.52~2.05〕)、脳梗塞(HR1.89〔1.46~2.47〕)のリスクが高かった。肺塞栓症、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がんのリスクには有意差がなかった。

 コホート2では、2型糖尿病患者において、経皮HRT施行者は非施行者に比べて、虚血性心疾患のリスクが低かった(HR0.75〔0.67~0.86〕)。肺塞栓症、深部静脈血栓症、脳梗塞、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がんのリスクには有意差がなかった。

 コホート3では、2型糖尿病患者において、経口HRT施行者は経皮HRT施行者に比べて、虚血性心疾患(HR1.21〔1.06~1.38〕)、肺塞栓症(HR2.01〔1.37~2.96〕)のリスクが高かった。脳梗塞、深部静脈血栓症、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がんのリスクには有意差がなかった。

 Anson氏は、「大規模コホートのデータを用いたわれわれの研究結果は、承認された用量の経皮HRTを最大5年間、2型糖尿病の中年女性に投与しても安全であることを示唆している。一方、経口HRTではリスク上昇が観察されたことを考慮すると、2型糖尿病の女性には経口エストロゲン製剤を処方すべきではないと言える」と総括している。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

(HealthDay News 2025年9月19日)

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