最新医療テクノロジーへのアクセス格差が小児1型糖尿病患児のHbA1cに影響

2025.09.29
連続血糖測定(CGM)や持続皮下インスリン注入(CSII)などの医療機器、およびインスリン製剤へのアクセスが良好か否かによって、小児1型糖尿病(T1DM)患児のHbA1cが有意に異なるとする論文が、「JAMA Network Open」に8月27日掲載された。モトル大学(チェコ共和国)のAlzbeta Santova氏らが、小児・思春期T1DMのアウトカム改善のための国際的な取り組みである「SWEETイニシアチブ」のレジストリを用いた横断的な解析の結果として報告した。

 この研究では2024年3~5月に、SWEETイニシアチブに参加している56カ国、121施設の小児糖尿病センターの代表者にウェブベースの質問票を送信。81施設(67%)から回答を得て、T1DMの小児4万2,349人(平均年齢14.3±4.4歳、男児52%、糖尿病罹病期間6.0±4.2年)のHbA1cデータが収集された。このデータを、CGM、CSII、血糖測定器、およびインスリン製剤へのアクセスの良否(保険償還の適用範囲や利用可能性)に基づき4群に分類した上で、患児のHbA1cを比較した。

 19カ国、32施設では、前記の医療機器およびインスリン製剤の全てに保険が適用される、ユニバーサルアクセスが整備されていた。その一方で、ボリビア、ガーナ、ハイチ、インド、ネパール、パキスタンなど、医療機器およびインスリン製剤に保険が全く適用されない国が8カ国存在した。

 解析の結果、GLP-1RA処方群は非処方群に比較し、非感染性ぶどう膜炎の発症リスク低下が認められた(相対リスク〔RR〕0.48〔95%信頼区間0.46~0.51〕)。この結果は、解析対象を2型糖尿病患者のみ(RR0.54〔同0.51~0.58〕)、または非糖尿病患者のみ(RR0.52〔0.46~0.59〕)とした場合も同様であった。

 ユニバーサルアクセスが整備されている施設群(4群の中で最もアクセスが良好な群)の患児の平均HbA1cは、7.62%(95%信頼区間7.59~7.64)から7.75%(同7.73~7.77)の範囲に分布していた。それに対して保険が適用されない、または医療機器を利用できない施設群(最もアクセスが不良の群)の患児の平均HbA1cは9.65%(9.55~9.71)から10.49%(10.40~10.58)に分布しており、有意差が認められた(P<0.001)。

 著者らは、「糖尿病治療における世界的な公平性を達成する上で最大の課題は、T1DM小児の最新医療テクノロジーへの平等なアクセスが保証されていないことだと結論付けられる」と述べている。また、「われわれの研究結果が、そのギャップを埋めるために現在進行中のSWEETイニシアチブなどの取り組みを加速させ、解決策を生み出す契機となるのではないか」と付け加えている。

 なお、複数の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。また、SWEETイニシアチブのレジストリは、製薬企業も含む同イニシアチブのメンバーの資金提供により構築されている。

(HealthDay News 2025年9月3日)

Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料