6.PHR(Personal Health Record)の最前線
2022.09.05
特集■糖尿病領域におけるデジタル診療の最先端
─情報通信技術は新たなる大海原の羅針盤たりうるか─
6.PHR(Personal Health Record)の最前線
Vol.39 No.5(2022年9・10月号)pp.529-535
─情報通信技術は新たなる大海原の羅針盤たりうるか─
6.PHR(Personal Health Record)の最前線
Vol.39 No.5(2022年9・10月号)pp.529-535

中島直樹 Nakashima, Naoki
九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター
はじめに
医療情報学領域では,医療施設や健診施設が用いるEHR(Electronic Health Record)(電子カルテもそのひとつ)のカウンターパートとして,患者・市民側がスマートフォン(以下,スマホ)やパソコン(以下,PC)で管理するPHR(Personal Health Record)が注目されている 1).そのデータには,患者や市民の日常の生活のなかで発生する個人の健康に関する情報の記録,たとえば,食事・運動・服薬・喫煙・飲酒などの行動情報,体温・体重・血圧・脈拍・血糖・血中酸素濃度などの生体情報などが含まれる.さらに今後は,健診機関や医療機関,調剤薬局で発生するさまざまな健診・診療情報,調剤情報もPHRに取り込まれることが増えるであろう.PHRの主たる目的は,自己の健康管理向上により健康状態を改善あるいは維持すること,疾患の発症や重症化を予防することである.またPHRは,特に糖尿病などの生活習慣病においては,そのデータを医療者と共有することにより,医師による正確な診断や治療判断のデータ源となったり,医療者による効率的な指導を受けたりすることにも有用である.さらには,患者の成長や転居,病態の変化や医療施設側の事情など,あるいは患者と医師の相性など,さまざまな理由によって主治医は変わり得るが,新しい主治医による診察の際のスムーズな病態の把握にも役立つだろう.しかしながら,それはPHRの標準化が確保されていることが前提である.また,データの長期保存も標準化が確保されていなければ保証されない.もしも標準化をしていないPHRの事業者が倒産すると,そのデータは消失してしまうか,データ回復に多大なコストがかかる.
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