GLP-1受容体作動薬の腎保護作用

塩見めぐみ Shiomi, Megumi
北里大学薬学部
北里大学メディカルセンター薬剤部
はじめに
糖尿病の薬物療法の目的は血糖コントロールの改善であり,各血糖降下薬の作用機序や合併症,副作用,患者の病態などを考慮して薬剤選択を行う.近年,これらの血糖降下薬には,血糖コントロール以外にも糖尿病患者にとって有用である多面的な作用が注目されている.sodium-dependent glucose transporter 2(SGLT2)阻害薬であるダパグリフロジンにおいては,左室駆出率が低下した心不全患者において,糖尿病合併の有無にかかわらず心不全の悪化または心血管疾患による死亡リスクがプラセボと比較して低かったことが報告されており 1),わが国では血糖降下薬としてだけではなく慢性心不全の治療薬としても承認されている.さらに海外では,慢性腎臓病(CKD)治療薬としての承認も取得しており,わが国においてもSGLT2阻害薬の適応拡大に向けた取り組みが進められている.glucagon-like peptide-1(GLP-1)受容体作動薬については,わが国での適応はいまだ限定的であるが,GLP-1 受容体作動薬による心血管イベント抑制効果が大規模臨床研究で示されており 2〜8),また非アルコール性脂肪肝炎に有用であることが示されるなど 9, 10),多面的作用の報告が国内外から数多く集積されてきている.GLP-1 が作用するとされている組織は,心臓や腎臓,肝臓,胃,骨,筋肉,脳などであり 11),GLP-1受容体作動薬についても,これらの組織に影響する可能性を秘めている.本稿では,GLP-1受容体作動薬の多面的作用のうち,腎保護作用に対する知見について紹介する.
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