連理草から糖尿病の錠剤ができた

  • 後藤 由夫 (東北大学名誉教授、東北厚生年金病院名誉院長)
2014.05.01
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1. 糖尿病治療薬の探求

 当時ドイツ領だったストラスグルグの大学で実験的膵摘糖尿病を発見した Minkowski はその後ブレスラウ大学(現ポーランド領ブロッラフ)の内科教授となった。熊谷岱蔵(1880-1962)は東京帝国大学卒業後ベルリン大学内科で免疫学、ブレスラウ大学で細菌学、最後に膵より抗糖尿病因子の抽出に取り組んでいた Minkowski の教室で内科学を研究して1913年帰国、翌年東北帝国大学内科学教授となった。スタッフがそろうのを待って1916年抗糖尿病因子抽出の研究を開始した。有効因子を手にしたのはトロント大学の Banting、Best と前後したが、その発見は Banting、Best のものとなった。インスリン発見後、糖尿病研究者の関心は経口治療薬に向けられた。Frank E ら(1926)はグアニジン化合物ジンタリンを開発したが、毒性のため中止された(図1)。

図1 ジンタリンの構造式

グアニジン

ジンタリン

メトホルミン
中世のヨーロッパでは重症糖尿病の高度の排尿がフランス ライラックの服用で軽減するといわれたが、それにはグアニジンが含まれていることがわかった。
Watanabe CK(1918)はグアニジンに血糖降下作用を認め、ブレスラウの Frank ら(1926)は Synthalin(decamethylene biguanide)を合成し、胃腸障害が強いのでさらに Synthalin B を合成したが、肝毒性のため中止された。Ungar G ら(1957)はビグアナイド剤 phenethylbiguanide を開発しフエンホルミン(DBI)として用いられたが、乳酸アシドーシスを起こすので中止、現在はメトホルミン、ブホルミンが広く用いられている。

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