高齢糖尿病患者ケアの近未来

  • 難波 光義 (兵庫医科大学病院 病院長)
2021.04.23
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 この1年間以上にわたり、明けても暮れても、全国津々浦々の自宅でも街中でも、勤務先でも通勤途上でも、最も高頻度に見聞きした言葉は、『新型コロナ』、『COVID-19』でした。今年こそは、世界中の医学界・医療界・関連業界が総力を結集して、これを撲滅しなければなりません。
 メタボリックシンドロームの方ではサイトカインストームが起きて重症化しやすく、また動脈硬化の進行した方(=糖尿病、高血圧、脂質異常症を基盤にした方、とりわけ高齢者の方々)では、全身のあらゆる部位で血栓形成を起こしやすく、これが呼吸不全以外での直接死因といわれています。
 この情報誌をご覧になっている医療者の方々が、日々の診療・指導・ケアで接しておられる糖尿病患者さんたちの多くが、前述のリスクファクターを併せ持つ患者さんであり、この1年間は特に細心の注意を払ってこられたことでしょう。小職の外来でも、「病院に行くのが怖いから、娘に処方箋を取りに行かせます」とか「院外薬局さんにFaxしてもらえませんか?」という受診控えが多くみられます。
 血糖コントロールが比較的安定している患者さんでは、一般的に2カ月に1回程度の受診の方が多いと思われますが、コロナ怖さに1回スキップすれば4カ月、2回スキップすれば半年にわたって検査データが不明のままの危うい診療を行うことになってしまいます。  このような予約キャンセルの電話を受けたとき、ふと感じたのは、「在宅診療医と訪問看護師さんには定期的に様子を診てもらっているから、あの人は大丈夫だろうな」という患者さんがいる一方で、「自宅で、A1cの測定ができるようにならないかなあ?」とか、 「バイタルデータとともに、CGM/FGM データを病院に飛ばせるシステムが導入できないかなあ?」という、ある種の欲求不満でした。
 コロナ禍の受診控えで気づかされた、わが国の高齢糖尿病患者ケアの課題に対しては、さらに高齢化に拍車のかかる『ポストコロナ時代』の到来までに、解決策を模索する努力を今から開始する必要があるでしょう。

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