MR拮抗薬「フィネレノン」が2型糖尿病を合併するCKDの心血管イベント発現や腎臓病進展を抑制 ステージ1~4を含む幅広いCKD患者にフォーカス
2型糖尿病を合併するステージ1~4を含む幅広い慢性腎臓病(CKD)患者にフォーカス
FIGARO-DKD試験では、フィネレノンをガイドラインにもとづく治療の最大忍容量に上乗せした場合、追跡期間中央値3.4年にわたり、主要複合評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院)の最初の発現までのリスクがプラセボと比べ、13%有意に低減されたことが示された(相対リスク減少、HR 0.87[95%CI:0.76-0.98];p=0.0264)。
同試験で、フィネレノンの安全性および忍容性は過去の安全性プロファイルと一貫していた。主に顕性アルブミン尿をともなうステージ3~4のCKD患者を対象としたFIDELIO-DKD試験では、フィネレノンが腎臓の主要複合評価項目および主な心血管系の副次複合評価項目を改善したことが示されており、同試験は、より幅広い患者集団におけるフィネレノンの心血管系ベネフィットに関する重要なエビデンスを追加することになる。
同試験から得られた知見は、欧州心臓病学会(ESC)学術集会2021のHot Lineセッションで8月28日に発表され、「New England Journal of Medicine」に同時掲載された。
ミシガン大学医学部医学名誉教授で、同試験の共同治験責任医師のバートラム・ピット教授は次のように述べている。
「残念ながら2型糖尿病を合併するCKDの患者さんは、2型糖尿病だけの患者さんより心血管イベントで亡くなる可能性が3倍高いため、心血管系と心不全の大きな負担を減らすには早期の診断と治療が重要です。FIGARO-DKD試験では、CKDの早期ステージの患者さんを含む幅広い患者さんで、フィネレノンの心血管系ベネフィットが示されました」。
フィネレノンの心血管系ベネフィットを確認
「フィネレノン」は、臨床開発中の新規非ステロイド型選択的MR拮抗薬で、臨床試験で腎臓や心臓障害の主な原因となるMRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。
2型糖尿病でMRの過剰活性化は、代謝、血行力学、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や、心血管障害に寄与すると考えられている。
フィネレノンを用いた第3相臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、およびFINEARTS-HFという3つの第3相臨床試験で構成されている。2型糖尿病を合併するCKDを対象としたフィネレノンの第3相臨床試験プログラムには、世界中の2型糖尿病を合併するCKD患者1万3,000人以上が無作為割り付けされており、腎臓および心血管系の両アウトカムに関し、標準治療に上乗せしたときのプラセボに対するフィネレノンの効果を検討する2試験で構成されている。
FIDELIO-DKD試験は、2型糖尿病を合併するCKD患者約5,700人を対象に、腎不全および腎臓病の進行抑制に関して、標準治療に上乗せしたときのフィネレノンの有効性と安全性をプラセボと比較検討した。
FIGARO-DKD試験は、ヨーロッパ、日本、中国、米国など48ヵ国から登録された2型糖尿病を合併するCKD患者約7,400人を対象に、心血管疾患の罹患率と死亡率の低減に関して、標準治療に上乗せしたときのプラセボに対するフィネレノンの有効性と安全性を検討した。
フィネレノン10mgまたは20mgの1日1回経口投与を標準治療(血糖降下療法やACE阻害薬、ARBなどのRAS阻害薬の最大忍容量を含む)に上乗せした場合、追跡期間中央値3.4年にわたり、主要複合評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院)の最初の発現までのリスクをプラセボと比べ、13%低減させた(相対リスク減少、HR 0.87[95%CI:0.76-0.98];p=0.0264)。
42ヵ月の時点で、主要複合評価項目のイベント抑制のための治療必要例数(NNT)は47だった。主要評価項目を構成する心血管死(HR 0.90[95%CI:0.74-1.09])、心不全による入院(HR 0.71[95%CI:0.56-0.90])の発現は、フィネレノンがプラセボより低い一方、非致死的心筋梗塞(HR 0.99[95%CI:0.76-1.31])、非致死的脳卒中(HR 0.97[95%CI:0.741.26])は、両群間で同程度だった。
副次複合評価項目(腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から40%以上の持続的なeGFR低下、腎臓死)の最初の発現は、フィネレノン群350人(9.5%)、プラセボ群395人(10.8%)だった。
両群に関し、追跡期間中央値3.4年では統計学的有意差にわずかに至らなかった(HR 0.87[95%CI:0.76-1.01];p=0.0689)ことから、後の階層的な評価項目は探索的な結果となる。
副次評価項目における各項目の最初の発現は、プラセボと比べフィネレノンで低値だった(腎不全:HR 0.72[95%CI:0.49-1.05]、4週間以上持続するベースライン時点から40%以上の持続的なeGFR低下:HR 0.87[95%CI:0.75-1.00])。
末期腎不全は、フィネレノン群32人(0.9%)、プラセボ群49人(1.3%)が発症した(HR 0.64[95%CI:0.41-0.995])。ほかの副次複合評価項目(腎不全、ベースライン時点から57%以上の持続的なeGFR低下、腎臓死)に関しては、フィネレノン群108人(2.9%)、プラセボ群139人(3.8%)にみられた(HR 0.77[95%CI:0.60-0.99])。
FIGARO-DKD試験で、フィネレノンの安全性および忍容性は過去の安全性プロファイルと一貫していた。治験薬投与下で発現した有害事象と重篤な有害事象は、全体的にみて両群間で同様だった。有害事象の大部分は軽度または中等度だった。重篤な有害事象の発現頻度はプラセボ群と比べ、フィネレノン群では低率でした(フィネレノン群31.4%、プラセボ群33.2%)。
高カリウム血症に関連した有害事象は、プラセボ群と比べフィネレノン群で多くみられた(フィネレノン群10.8%、プラセボ群5.3%)。高カリウム血症に関連する重篤な有害事象の発現頻度は低く(フィネレノン群0.7%、プラセボ群0.1%)、両群ともに高カリウム血症に関連する死亡はなかった。両群に高カリウム血症による治験薬投与中止がみられた(フィネレノン群1.2%、プラセボ群0.4%)。
メタ解析FIDELITYでは、2型糖尿病を合併するCKD患者での腎・心血管系ベネフィットが示される
ESCのHot Lineセッションでは、第3相臨床試験FIGARO-DKDおよびFIDELIO-DKDの計1万3,000人以上を対象に、事前規定されたメタ解析FIDELITYのデータも発表された。FIDELITYの結果より、2型糖尿病を合併するCKD患者におけるフィネレノンの心血管系および腎臓に対するベネフィットが示された。
FIDELITYでフィネレノンは、心血管系の複合評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院)の最初の発現までのリスクをプラセボと比べ、14%低減した(HR 0.86 [95%CI:0.78-0.95];p=0.0018)。腎臓の複合評価項目(腎不全の発症、4 週間以上持続するベースライン時点から57%以上の持続的なeGFR低下、腎臓死)の最初の発現までのリスクは、プラセボと比べ、23%低減された(HR 0.77[95%CI:0.67-0.88];p=0.0002)。腎臓評価項目の発現は、フィネレノン群360人(5.5%)、プラセボ群465人(7.1%)だった。
ギリシャのアテネ国立カポディストリアン大学循環器学教授で、第3相臨床試験 FIDELIO-DKD およびFIGARO-DKDの共同治験責任医師であるガラシモス・フィリパトス教授は次のように述べている。
「現在、治療の選択肢があるにもかかわらず、患者さんは腎不全や心血管イベントの発現リスクが高いままです。本メタ解析から得られたデータは、CKDの進行を遅らせ、患者さんのアウトカムを改善するために、腎障害を早期に発見することの重要性も強調しています。腎障害の早期発見は、腎障害の最も早期の兆候を検出するアルブミン尿を定期的にモニタリングすることによってのみ可能です」。
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