MR拮抗薬「フィネレノン」 2型糖尿病を合併するCKD患者で腎・心血管系ベネフィットをもたらす 米国腎臓学会
ベースラインの治療法にかかわらず2型糖尿病を合併するCKD患者で腎・心血管系ベネフィットが
フィネレノンは、開発中の非ステロイド型選択的MR拮抗薬で、前臨床試験でMRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。2型糖尿病でMRの過剰活性化は、代謝、血行力学、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のある慢性腎臓病(CKD)の進行や心血管障害に寄与すると考えられている。
フィネレノンを用いた第3相臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、FIDELIODKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HF、FIND-CKDという4つの第3相臨床試験で構成されている。
FIGARO-DKD試験では、副次複合評価項目(腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から40%以上の持続的な推算糸球体濾過量[eGFR]、腎臓死)の最初の発現は、フィネレノン群9.5%、プラセボ群10.8%だった。両群に関し、追跡期間中央値が3.4年では統計学的有意差にわずかにいたらなかった(HR 0.87[95%CI 0.76-1.01]p=0.0689)。
FIGARO-DKD試験データの探索的解析結果として、微量~顕性アルブミン尿をともなうステージ1~4のCKD患者で、フィネレノンは4週間以上持続するベースライン時点から40%以上および57%以上の持続的なeGFR低下の腎臓複合評価項目のリスクを低減したことが報告された。これはFIDELIO-DKD試験で示されたベネフィットとおおむね一貫していた。
腎臓の複合評価項目に対するフィネレノンの効果には、末期腎不全発症の相対リスクが36%低減したことが反映された。末期腎不全は、フィネレノン群0.9%、プラセボ群1.3%に発症した(HR=0.64[95%CI 0.41-0.995]p=0.046)。
また、FIDELIO-DKD試験の解析では、2型糖尿病を合併するCKD患者で、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の変化と心血管系・腎保護との関連が検討された。FIGARO-DKD試験と比べ、FIDELIO-DKD試験には進行したCKD患者が多く含まれていた。
解析でフィネレノンは、ベースラインから4ヵ月目までのUACRの変化にかかわらず、心血管系の複合評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院)および腎臓の複合評価項目(腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から40%以上の持続的なeGFR低下、腎臓死)の発現リスクを早期に低下させることが明らかになった。
米国シカゴ大学医学部米国心臓協会総合高血圧センター内科学教授で、FIDELIO-DKD試験の治験責任医師であるジョージ L バクリス教授は次のように述べている。
「ASNで発表されたFIDELIO-DKD試験と、FIGARO-DKD試験、とくにこれら臨床試験の統合解析FIDELITYの結果は、CKDの初期兆候をタイムリーに診断し、モニタリングすることで、患者さんのアウトカムを改善する可能性を明確に示しています。さらに、早期の腎障害やより進行した2型糖尿病を合併するCKDを含む幅広い患者さんで、フィネレノンが心血管系と腎臓のアウトカムを改善する効果的な治療選択肢となる可能性を示しています」。
第3相臨床試験FIGARO-DKDおよびFIDELIO-DKDの計1万3,000人以上を対象とした、事前規定された統合解析FIDELITYの結果も発表された。
2型糖尿病を合併するCKD患者の重症度にかかわらず、フィネレノンの腎および心血管系のベネフィットが示された。解析した結果、フィネレノンは、腎臓の複合評価項目(腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から57%以上の持続的なeGFR低下、腎臓死)の発現リスクを23%(HR=0.77[95%CI 0.67-0.88]p=0.0002)、末期腎不全の発症リスクを20%(HR=0.80[95%CI 0.64-0.99]p=0.040)低減した。
安全性は、フィネレノン群とプラセボ群で同様だった。腎臓の有害事象は両群間で同様であり、フィネレノン群の高カリウム血症に関連した有害事象による治験薬投与中止は少数だった。
事前規定された統合解析FIDELITYの追加データでは、ベースライン時点でのSGLT2阻害薬の使用にかかわらず、フィネレノンはプラセボと比べ腎および心血管系のベネフィットを一貫して示し、2型糖尿病を合併するCKD患者のUACRを低下させたことが示された(SGLT2阻害薬使用なし32%、使用あり37%)。
前臨床試験のデータでは、フィネレノンとSGLT2阻害薬の併用療法は、各単独療法を上回るベネフィットがあることが示されている。事前規定された統合解析FIDELITYでは、ベースライン時点のSGLT2阻害薬投与患者は、平均のeGFRが高く、UACRが低く、また、スタチン系薬剤とGLP-1受容体作動薬を多く使用していた。
今回の新しい解析では、2型糖尿病を合併するCKD患者で、ベースライン時点でのSGLT2阻害薬の使用有無にかかわらずUACRが改善され、フィネレノンはプラセボと比べ腎および心血管系のベネフィットが一貫して示された。
デンマーク・コペンハーゲンにあるステノ糖尿病センター合併症研究部門責任者のピーター・ロシング教授は次のように述べている。
「多くの2型糖尿病を合併するCKD患者さんは、既存の治療法にもかかわらず腎不全や早期死亡に至ることが多く、このような脆弱な患者さんの疾患進行を遅らせる新しい治療薬が急務となっています。フィネレノンは、疾患進行の主要な要因であるMRの過剰活性化を抑制するという点で、既存の治療薬とは異なります。FIDELITYの解析結果は、患者さんの疾患負担を軽減するために、既存治療薬とともにフィネレノンが果たす役割の可能性を示しています」。
Cardiovascular Events with Finerenone in Kidney Disease and Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine 2021年8月28日)
Finerenone and Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine 2021年3月18日)
Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes(New England Journal of Medicine 2020年12月3日)
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