MR拮抗薬「ケレンディア」 2型糖尿病を合併するCKD患者で心血管系・腎臓のベネフィットを示す 動脈硬化性心血管疾患の有無にかかわらず

2022.05.18
 ドイツのバイエル社は4月4日、MR拮抗薬「ケレンディア」(一般名:フィネレノン)の効果について、第3相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの、事前規定された統合解析FIDELITYで、事前規定されたサブグループ解析から得られた最新データより、2型糖尿病を合併する幅広い重症度の慢性腎臓病(CKD)患者では、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往の有無にかかわらず、ケレンディアを標準治療に上乗せした場合、プラセボと比較して、心血管系および腎臓の複合評価項目の発現リスクを一貫して低減したことが示されたと発表した。このサブグループ解析の結果は、第71回米国心臓病学会年次学術集会(ACC.22)で発表された。

 心血管系合併症は、2型糖尿病を合併するCKD患者の死因のなかで最多であり、2型糖尿病を合併するCKDにASCVD疾患が加わると全死亡のリスクがもっとも高くなることが知られている。

2型糖尿病合併のCKD患者とASCVD患者で、ケレンディアが心血管系・腎臓の評価項目のリスクを低減

 「ケレンディア」(一般名:フィネレノン)は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。2型糖尿病でMRの過剰活性化は、代謝、血行力学、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のあるCKDの進行や心血管障害に寄与する。

 FIDELITY(FIDELIO-DKD試験、FIGARO-DKD試験を含む)は、2型糖尿病を合併するCKD患者1万3,000人以上を対象に、腎疾患の進行抑制および致死的・非致死的心血管イベントのリスク低減に関して、ケレンディアの効果を検討した最大規模の心腎アウトカム第3相臨床試験プログラム。

 ギリシャのアテネ国立カポディストリアン大学循環器学教授で、FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの共同治験責任医師であるガラシモス フィリパトス教授は次のように述べている。
 「2型糖尿病を合併するCKD患者さんでは、心血管系合併症がもっとも多い死因の1つですが、これらの患者さんの心血管イベントを効果的に抑制したり、低減したりすることを示すデータは現在限られています。フィネレノンに関する既存のエビデンスにもとづくこれらのサブグループ解析は、2型糖尿病、CKDやASCVDを併発しているとくにリスクの高い患者さんのアウトカムを改善するとともに、ASCVDの既往がない患者さんのイベント発現を抑制するという、この新規治療薬の可能性を示しています」。

ASCVDの既往の有無にかかわらず、2型糖尿病を合併するステージ1~4を含む幅広い重症度のCKD患者で、心血管系・腎臓評価項目の発現を抑制

 FIDELITYの解析対象となった1万3,026人のうち、5,935人(45.6%)が、ベースライン時に動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往があった。中央値3年の追跡期間で、ASCVDの既往あり群は既往なし群と比べ、心血管系複合評価項目(発現率[100患者年]6.9対3.0;ハザード比[HR]2.09;95%信頼区間[CI]1.89-2.30)、心血管死または心不全による入院(発現率[100患者年]4.51対1.92;HR 2.12;95%CI 1.88-2.40)、全死亡(発現率[100患者年]4.0対2.1;HR 1.72;95%CI 1.52-1.94)の発現率が高くなった。腎臓複合評価項目では、ASCVDの既往の有無による違いはなかった(発現率[100患者年]2.1対2.4;HR 0.96;95%CI 0.83-1.10)。

 事前規定されたFIDELITYのサブグループ解析ではASCVD患者で、ケレンディアはプラセボと比べ、心血管系複合評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院)の最初の発現までのリスクを、ASCVDの既往あり群(HR 0.83;95%CI 0.74-0.94)、および既往なし群(HR 0.91;95%CI 0.78-1.06;交互作用のP値 0.38)ともに、低減させる傾向がみられた。

 ケレンディアはプラセボと比べ、ASCVDの既往の有無にかかわらず、心血管死または心不全による入院の複合評価項目に関し、発現リスクを低減させる傾向がみられた(既往あり群、HR 0.82;95%CI 0.71-0.94;既往なし群、HR 0.86;95%CI 0.71-1.04;交互作用のP値 0.68)。

 腎臓複合評価項目(腎不全の発症、4週間以上持続するベースライン時点から57%以上の持続的な推算糸球体濾過量[eGFR]低下、腎臓死)の最初の発現に対するケレンディアの効果については、ASCVDの既往の有無にかかわらず、ケレンディアは腎臓複合評価項目の発現リスクを低減させた(既往あり群、HR 0.71;95%CI 0.57-0.88;既往なし群、HR 0.81;95%CI 0.68-0.97;交互作用のP値 0.33)。

 さらに、全死亡に対するケレンディアの効果は、ASCVDの既往の有無により影響されなかった(既往あり群、HR 0.85;95%CI 0.74-0.99;既往なし群、HR 0.95;95%CI 0.79-1.14;交互作用のP値 0.38)。ケレンディアの安全性プロファイルは、ASCVDの既往あり群と既往なし群で同程度だった。

 「2型糖尿病を合併するCKDの患者さんは、2型糖尿病のみの患者さんと比べ、心血管イベントによる死亡リスクが3倍高いと言われています。つまり、腎障害の重症度は、心血管イベントの発現率の高さと相関しています。2型糖尿病を合併するCKDの幅広い患者さん、とくに死亡リスクがもっとも高いASCVDの患者さんで、ケレンディアが心血管系および腎臓のベネフィットを示すことを嬉しく思います」と、同社では述べている。

 第3相臨床試験FIDELIO-DKDの結果にもとづき、ケレンディアは2022年2月に、欧州連合で2型糖尿病を合併する成人CKD(アルブミン尿を伴うステージ3~4)を対象に、ケレンディアの販売名で販売承認された。2021年7月にケレンディアは、米国食品医薬品局(FDA)により承認された。また、第3相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの結果にもとづき、2022年3月に日本の厚生労働省より承認された。

 ケレンディアを用いた第3相臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HF、FIND-CKD、FIONAという5つの第3相臨床試験と、第2相臨床試験CONFIDENCEで構成されている。

ケレンディア錠10mg/ケレンディア錠20mg 添付文書 適正使用ガイド 患者向医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)

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[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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