MR拮抗薬「ケレンディア」 2型糖尿病を合併するCKDでの腎臓および心血管に対する有用性を支持する新データ
ケレンディアが心不全による入院を抑制する可能性 ベースライン時点で左室肥大がある集団では効果がより顕著
「ケレンディア」は、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。MRの過剰活性化は、代謝、血行力学、炎症や線維化の要因によって引き起こされる可能性のある慢性腎臓病(CKD)の進行や心血管障害に寄与する。
2型糖尿病を合併するCKDを対象としたフィネレノンの第3相臨床試験プログラムには、世界中の2型糖尿病を合併するCKD患者1万3,000人以上が無作為割り付けされており、完了して結果発表された2試験で構成されている。2試験では、腎臓および心血管系の両アウトカムに関し、標準治療に上乗せしたときのプラセボに対するフィネレノンの効果が検討された。
FIDELIO-DKD試験では、2型糖尿病を合併するCKD患者約5,700人を対象に、腎不全および腎臓病の進行抑制に関して、標準治療に上乗せしたときのフィネレノンの有効性と安全性がプラセボと比較検討された。FIGARO-DKD試験では、2型糖尿病を合併するCKD患者約7,400人を対象に、心血管疾患の罹患率と死亡率の低減に関して、標準治療に上乗せしたときのプラセボに対するフィネレノンの有効性と安全性が検討された。
FIDELIO-DKD試験とFIGARO-DKD試験の事前規定された統合解析FIDELITYは、2型糖尿病を合併するCKD患者1万3,000人以上を対象とする最大規模の心腎アウトカム第3相臨床試験プログラム。
左室肥大は、心血管疾患とそれにともなう罹患率および死亡率の予測因子となる。解析対象となった2型糖尿病を合併するCKD患者1万3,026人のうち、1,250人がベースライン時点で左室肥大を有していた。
左室肥大がある集団と、ない集団との間で、人口統計学的特性とベースライン特性は均衡がとれていたが、左室肥大がある集団は、ない集団より尿中アルブミン/クレアチニン比が高値だった。
ベースライン時点で左室肥大がある集団では、冠動脈疾患、心不全、心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患の既往がある割合が高くなっていた。左室肥大がある集団では、β遮断薬と抗血小板剤の併用がより高頻度にみられた。
フィネレノン群は左室肥大の有無にかかわらず、心血管複合エンドポイントの相対リスクを一貫して低下させた(左室肥大あり28% vs 左室肥大なし11%、交互作用のp値0.11)。腎複合エンドポイントの相対リスクの低下も、サブグループ間で一貫していた(左室肥大あり44% vs 左室肥大なし20%、交互作用のp値0.18)。
心血管複合エンドポイントの構成要素である心不全による入院の相対リスクは、両サブグループで低下し(左室肥大あり66% vs 左室肥大なし14%)、フィネレノン群の効果は左室肥大がある集団で有意に大きくなった(交互作用のp値0.0024)。
全体的にみて、安全性はサブグループ間で同様であり、有害事象の重症度は大部分が軽度から中等度だった。高カリウム血症の発現率は、左室肥大の有無にかかわらずプラセボ群よりフィネレノン群で高くなったが、高カリウム血症による投与中止は両群とも低率だった。
ギリシャのアテネ国立カポディストリアン大学循環器内科教授で、第3相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの共同治験責任医師であるガラシモス フィリパトス氏は次のように述べている。
「CKDや2型糖尿病、高血圧症の患者さんは、CKDでない患者さんと比べ、左室肥大の有病率が高いことが示されています。これらの疾患を併発していると、心血管イベントのリスクがより高くなります。既存の臨床エビデンスにもとづき、この新しいデータは左室肥大やCKD、2型糖尿病を有する特に脆弱な患者さんで、フィネレノンがアウトカムを改善する可能性を示しています。また、左室肥大がある集団と、ない集団の両サブグループで、心不全による入院の相対リスクを低下する可能性も明らかになりました」。
「2型糖尿病を合併するCKDの患者さんは、複雑なリスクプロファイルを有していることが多いのが特徴です。今回の探索的解析により、2型糖尿病を合併するCKD患者さんのなかでもとくに脆弱なサブグループで、フィネレノンの心血管および腎臓に対する有用性が強調されており、患者さんを入院させることなく、心臓と腎臓を守るこの治療薬の可能性が示されています」と、同社では述べている。
第3相臨床試験FIDELIO-DKDの結果にもとづき、ケレンディアは2022年2月に欧州連合で販売承認され、2021年7月には米国食品医薬品局(FDA)より承認された。ケレンディアはまた、第3相臨床試験FIDELIO-DKDおよびFIGARO-DKDの結果にもとづき、2022年3月に日本の厚生労働省より承認された。フィネレノンは世界の複数国で製造販売承認申請が行われており、現在審査中。
ケレンディアを用いた第3相臨床試験プログラムFINEOVATEは現在、FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HF、FIND-CKD、FIONAという5つの第3相臨床試験と、第2相臨床試験CONFIDENCEで構成されている。
なお、バイエルは2021年11月に、高度タンパク尿の増加をともなう小児CKD患者約200名を対象に、標準治療に上乗せしたフィネレノンの有効性と安全性、および薬物動態/薬力学(PK/PD)を検討する多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第3相臨床試験FIONAの開始を発表した。
2021年9月には、高血圧症や慢性糸球体腎炎(腎臓の炎症)などの非糖尿病性CKD患者1,500人以上を対象に、CKDの進行に関して、ガイドラインで推奨されている治療に上乗せしたフィネレノンの有効性と安全性を検討する多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第3臨床試験FIND-CKDの開始を発表した。
同社はまた、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第3相床試験FINEARTS-HFの開始を2020年6月に発表しました。同試験は、左室駆出率が維持されている、つまり左室駆出率40%以上の症候性心不全(HF)患者(NYHA心機能分類II~IV度)5,500人以上を対象に、フィネレノンとプラセボを比較検討する。同試験の主要目的は、心血管死およびすべての(初発および再発)HFイベント(HFによる入院またはHFによる緊急受診と定義)の複合評価項目の発現率減少に関して、プラセボに対するフィネレノンの優越性を検証すること。
さらに2022年2月に、2型糖尿病を合併するCKD患者を対象に、フィネレノンとSGLT2阻害薬エンパグリフロジンを同時に開始する併用療法について、フィネレノン単剤療法、エンパグリフロジン単剤療法と比較検討する3群比較の第2相臨床試験CONFIDENCEの開始を発表した。同試験の主要目的は、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の低下に関し、フィネレノンとエンパグリフロジンを同時に開始する併用療法について、エンパグリフロジン単剤療法またはフィネレノン単剤療法に対する優越性を検証すること。
ケレンディア錠10mg/ケレンディア錠20mg 添付文書 適正使用ガイド 患者向医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)
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