高齢糖尿病患者のSU薬の処方実態を調査 非推奨の用量や薬剤が選択された事例も グリメピリドの過剰処方は25%
高齢糖尿病患者のSU薬の処方実態を調査
グリメピリドの過剰処方やグリベンクラミドの処方も
高齢の糖尿病患者に対するスルホニル尿素(SU)薬の処方では、「高齢者糖尿病診療ガイドライン2023」では推奨されていない用量や薬剤が選択されている事例が少なくないことが、国際医療福祉大学とカケハシが実施したクラウド型電子薬歴の大規模なリアルワールドデータ解析により示された。高齢患者でのグリメピリドの過剰処方や、グリベンクラミドの処方もみられた。
SU薬は、その血糖降下作用機序から、とくに高齢者における低血糖リスクに注意が必要となり、ガイドラインでは「使用する場合はできるだけ少量にとどめる」と明記されている。
しかし調査では、65歳以上の高齢糖尿病患者で推奨用量を超えた割合は、グリクラジドは7.8%、グリメピリドは25.0%に上った。
さらに、高齢患者の0.5%に速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)が併用処方されており、5.6%にインスリンが併用処方されていた。
日本老年医学会・日本糖尿病学会の「高齢者糖尿病診療ガイドライン2023」には、「スルホニル尿素(SU)薬は作用が強力であり、グリクラジドは20mg、グリメピリドは0.5mgと低用量で使用し、グリクラジドは40mg、グリメピリドは1mgを超えないように調整する」「グリベンクラミドは作用時間が長く、高齢者糖尿病では使用を控える」「HbA1cが低値(7.5%未満)の患者にこれらの薬剤を使用すると、低血糖の頻度や死亡リスクが増加するという報告もある」などと表記されている。
研究は、国際医療福祉大学大学院医学研究科医学専攻およびカケハシの山崎路子氏、糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也教授らによるもの。研究成果は、「Journal of Diabetes Investigation」に掲載された。
65歳~75歳未満では4剤併用、75歳以上では2剤併用が一般的
研究グループは今回、カケハシのクラウド型電子薬歴・服薬指導システム「Musubi」に蓄積された薬局ベースの実臨床データを使用し、後ろ向きの観察研究を実施。
解析の対象となった患者総数は9万1,229人で、分析期間は2022年11月~2023年10月。グリメピリドは80.1%、グリクラジドは16.3%、グリベンクラミドは3.6%に処方されていた。
もっとも一般的な処方パターンは、65歳~75歳未満の患者ではSU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、ビグアナイドの4剤併用療法、および75歳以上の患者では、SU薬とDPP-4阻害薬の2剤併用療法だった。
「研究結果は、実臨床での高齢者糖尿病診療の課題を浮き彫りにしただけでなく、糖尿病薬の適切な使用を啓発することの重要性をあらためて明示するものだ」と、研究者は述べている。
高齢者糖尿病診療ガイドライン2023 (日本老年医学会・日本糖尿病学会)
高齢者糖尿病診療ガイドライン2023(日本医療機能評価機構)