GLP-1受容体作動薬の最新情報 第59回欧州糖尿病学会(EASD)ダイジェスト1

2023.10.13
 第59回欧州糖尿病学会(EASD)年次集会が、10月2日~6日にドイツのハンブルグで開催された。

GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者の血糖管理と体重を最大3年間大幅に改善

 GLP-1受容体作動薬(セマグルチド)の6ヵ月の投与により、2型糖尿病成人の血糖コントロールと体重減少を大幅に改善し、その効果は最長で3年間持続すると、イスラエルのマッカビ医療サービス研究所が発表した。
年齢の平均が62歳、BMI 33.7、HbA1c値 7.6%の2型糖尿病の成人2万3,442人に2019年~2022年、セマグルチド皮下注射(0.25mg、0.5mg、1mg)を投与。治療開始から6ヵ月後、患者のHbA1c値は平身して0.77%(7.6%から6.8%に)低下し、体重は4.7kg(94.1kgから89.7kgに)減少し、高いアドヒアランスを示した患者ほどHbA1cと体重の低下は大きかった。
 週1回のセマグルチドの有効性は、ランダム化比較試験で実証されているが、長期にわたる大規模なリアルワールドデータは不足しているとしている。

GLP-1受容体作動薬に消化器症状の有害事象 インフォームド コンセントの必要を指摘

 GLP-1受容体作動薬には、糖尿病患者によっては消化器症状(便秘・吐き気・嘔吐・腹部膨満・腹痛など)の有害事象が起こるリスクがあることが懸念されているが、減量目的で薬剤を使用した非糖尿病患者を対象とした初の大規模調査で、GLP-1受容体作動薬(セマグルチドまたはリラグルチド)の使用により、膵臓の炎症のリスクが9.09倍に、腸閉塞のリスクが4.22倍に、胃不全麻痺のリスクが3.67倍に、それぞれ上昇することが判明。
 カナダのブリティッシュコロンビア大学が、約1,600万人の米国人の健康保険請求記録を調査。「GLP-1受容体作動薬の利用が増えており、これらの薬により潜在的に何が起こりえるかを患者に十分に説明しインフォームド コンセントを得ることが必要」としている。

GLP-1受容体作動薬による有害事象 胆道疾患とは関連なし

 GLP-1受容体作動薬を体重減少の目的で使用することは、膵炎・胃不全麻痺・腸閉塞などの消化器症状のリスク増加と関連しているが、胆道疾患とは関連していないことが判明[HR 1.50、95% CI 0.89-2.53]。
 GLP-1受容体作動薬が広く利用されていることを考慮すると、減量目的での使用を検討している患者は、まれではあるものの、これらの有害事象が起こりえることを考慮する必要があると、ブリティッシュコロンビア大学が発表。

GIP/GLP-1受容体作動薬は若年発症型2型糖尿病に対しても効果がある

 若年発症型2型糖尿病/早期発症型2型糖尿病(40歳未満で診断、EOT2D)では、治療にあまり反応しない、より進行性の症例がみられるが、GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」は、こうした若年発症型2型糖尿病に対しても効果があり、治療を開始して40~52週目にHbA1c値および体重に改善がもたらすことが、英レスター大学の研究で明らかになった。
 チルゼパチドの第3相試験SURPASSのデータから、若年発症患者873例、後期発症患者3,394例の、投与開始後40週間または52週間のHbA1c、体重、腹囲径、脂質、血圧などの心臓代謝マーカーの変化を比較。早期発症型の2型糖尿病は、後期発症型に比べて血糖値、平均体重・BMIがそれぞれ高く、心血管疾患のリスクを高める血中脂肪値が高い傾向がみられた。

第59回欧州糖尿病学会(EASD)年次集会

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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