テストステロン補充により2型糖尿病男性の血糖管理が改善など 第59回欧州糖尿病学会(EASD)ダイジェスト4

2023.10.17
 第59回欧州糖尿病学会(EASD)年次集会が、10月2日~6日にドイツのハンブルグで開催された。

テストステロン補充により2型糖尿病男性の血糖コントロールが改善

 テストステロン欠乏症の2型糖尿病男性では、テストステロン補充療法(TRT)により、血糖コントロールが最大2年間改善することが、英国臨床糖尿病専門医協会(ABCD)に参加している8ヵ国の37施設のデータ解析により明らかになった。
 男性ホルモンであるテストステロンの欠乏により、時間の経過とともにHbA1cが上昇するのは、テストステロンの継続的な効果によりインスリン抵抗性と脂肪増加が促されるためとみられている。 推定では、
 2型糖尿病の男性の約40%が症候性のテストステロン欠乏であり、心血管の危険因子、骨粗鬆症、心理的健康への悪影響と関連しており、死亡リスクを約2倍に高めていると指摘。
 8ヵ国の34施設が参加した試験には、428人の患者(平均年齢71歳)が参加。TRTによる3ヵ月の治療を受けた患者81人では平均HbA1c値は8.7%から8.2%に、12ヵ月の治療を受けた患者101人では8.7%から7.8%に、24ヵ月の治療を受けた患者121人では8.7%から7.2%に、それぞれ低下した。

50歳未満の女性では2型糖尿病の診断の閾値を下げる必要がある

 50歳未満の女性では、2型糖尿病の診断に必要なHbA1cの閾値を下げる必要があると、英国サルフォード王立病院が発表した。女性の2型糖尿病リスクは過小評価されている可能性があり、介入の機会を逸すケースが少なくないと指摘。
 一般的に女性は男性よりも遅い年齢で2型糖尿病と診断されることが知られており、調査でも50歳未満の女性では2型糖尿病の診断が同年齢の男性よりも50%少ないことが示されたが、閉経前の女性では月経時の失血により赤血球の生存期間が短くなり、ヘモグロビンが糖化する時間が短くなっていることが影響していると考えられるとしている。
 英国の検査施設で検査を受けた14万6,907人と93万8,678人を調査し、50歳未満の女性について、糖尿病の診断に必要なHbA1cの閾値を6.6%にした場合、2型糖尿病の診断が17%増えることを確認。

喫煙者は2型糖尿病の発症リスクが73%増加 喫煙に関連した代謝サインを特定

 喫煙は、さまざまな代謝に影響を与え、2型糖尿病の発症リスクを高め、2型糖尿病あるいはインスリン抵抗性に対する遺伝的感受性をもつ個人でとくにリスクが高いことが、英国バイオバンクに参加した9万3,000人超のデータ分析で明らかになったと、スウェーデンのカロリンスカ研究所が発表した。
 研究グループは、核磁気共鳴分光(NMR)を使用し、2006年の研究開始時に糖尿病と診断されていなかった37~73歳の非喫煙者・元喫煙者・現在喫煙者の計9万3,722人の血液サンプル中の数百の代謝物を分析し、喫煙者が2型糖尿病を発症する可能性が高いかを予測するのに役立つ131の代謝形質の代謝サインを特定した。
 現在喫煙者は非喫煙者と比較して、2型糖尿病のリスクが73%増加しており、この過剰リスクの38%は喫煙に関連した代謝サイン(男性で44%、女性で30%)によって媒介されることが判明。喫煙により不健康な飽和脂肪酸のレベルが高くなり、DHA、オメガ6脂肪酸、主に魚介類に含まれるオメガ3脂肪酸などの健康な多価不飽和脂肪酸の割合が低下することなども分かった

救急部門でのスクリーニング検査により未診断の糖尿病を検出

 救急部門(A&E)での2型糖尿病のスクリーニング検査の導入により、これまで未診断だった症例が毎年数千件発見できる可能性があると、英国のNHS財団トラストが発表した。
 同財団のA&E部門を訪れた糖尿病未診断の1,388人を対象とした調査で、血糖値が正常だったのは61%(平均年齢51歳)、糖尿病前症は30%(57歳)、2型糖尿病は9%(56歳)と判定された。とくにアジア人は、白人に比べて耐糖能異常の発生率が43%対38%と高く、前糖尿病あるいは糖尿病と診断される可能性が2倍高かった。
 プライマリケアで2型糖尿病リスクの高い人を検出するために開発されたフィンランド糖尿病リスクスコア(FINDRISC)を使用し、性別・年齢・BMI・高血圧・血糖値・糖尿病の家族歴・食事や運動などの生活習慣などを調査。

第59回欧州糖尿病学会(EASD)年次集会

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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