世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」 2型糖尿病に対する国内承認を取得

2022.09.29
 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」(一般名:チルゼパチド)について、2型糖尿病に対する国内承認を取得したと発表した。

 「マンジャロ」は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の、2つの受容体に単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬 GIPとGLP-1の両インクレチンの作用を統合

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注2.5mgアテオス」、「同 皮下注5mgアテオス」、「同 皮 下注7.5mgアテオス」、「同 皮下注10mgアテオス」、「同 皮下注12.5mgアテオス」、「同 皮下注15mgアテオス」(一般名:チルゼパチド)について、9月26日に、日本イーライリリーが厚生労働省より「2型糖尿病」を効能・効果として承認を取得したと発表した。

 「マンジャロ」は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の、2つの受容体に単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。

 同剤の構造は、天然GIPペプチド配列をベースとした単一分子だが、GLP-1受容体にも結合するように改変されている。GIPとGLP-1の両インクレチンの作用を単一分子に統合したことで、選択的に長時間作用し、空腹時および食後の血糖値を改善する。

 同剤は、1回使い切りのオートインジェクター型注入器「アテオス」の週1回皮下注射によって投与される。

 今回の「マンジャロ」の承認は、主に2つの国内第3相臨床試験(SURPASS J-mono、SURPASS J-combo)、および2つの国際共同試験(SURPASS-1、SURPASS-5)の有効性および安全性の結果にもとづいている。

 国内単独療法試験「SURPASS J-mono」では、主要評価項目であるHbA1cのベースラインから投与52週時までの平均変化量について、デュラグルチド0.75mgに対するチルゼパチド5mg、10mg、15mgの優越性が検証された。

 また、国内併用療法試験「SURPASS J-combo」では、チルゼパチド5mg、10mg、15mgを経口血糖降下薬単剤と併用した際の安全性の検討および有効性の検証がされた。

 「SURPASS J-mono」試験は、食事運動療法および運動療法のみ、またはチアゾリジン系薬剤を除く経口血糖降下薬の単独療法で血糖マネジメントが不十分な成人2型糖尿病の被験者636例を対象に、チルゼパチド5mg、10mg、15mgを週1回投与したときのデュラグルチド0.75mg投与に対する優越性を評価した国内第3相試験。主要評価項目は、HbA1cのベースラインから投与52週時までの平均変化量とし、この他に副次評価項目として、体重および空腹時血糖値などが評価された。

 「SURPASS J-combo」試験は、DPP-4阻害剤を除く経口血糖降下薬の単剤療法を3ヵ月以上継続していても血糖マネジメントが不十分な成人2型糖尿病の被験者443例を対象に、有害事象の発現割合を評価した国内第3相試験。主要評価項目は、経口血糖降下薬(スルホニルウレア剤、ビグアナイド系薬剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジン系薬剤、速効型インスリン分泌促進剤またはSGLT2阻害剤)併用下での、52週間のチルゼパチド5mg、10mg、15mg週1回投与の有害事象の発現割合とし、副次目的として、経口血糖降下薬の併用下でのチルゼパチド週1回52週間投与したときの有効性が評価された。

 「SURPASS-1」試験は、食事療法および運動療法のみで血糖マネジメントが不十分であり、糖尿病治療として注射療法の使用歴がなく、試験開始前3ヵ月以内に経口血糖降下薬の投与を受けていない成人2型糖尿病の被験者478人(日本人:89人)を対象に、チルゼパチド5mg、10mg、15mgを週1回投与したときのプラセボ投与に対する優越性を評価した国際共同第3相試験。主要評価項目は、HbA1cのベースラインから投与40週時までの平均変化量とし、この他に副次評価項目として体重および空腹時血糖値などが評価された。

 「SURPASS-5」試験は、メトホルミン併用または非併用下でのインスリン グラルギン1日1回投与で血糖マネジメントが不十分な成人2型糖尿病の被験者475人(日本人:82人)を対象に、チルゼパチド10mg15mgを週1回併用投与したときのプラセボ投与に対する優越性を評価した国際共同第3相試験。主要評価項目は、HbA1cのベースラインから投与40週時までの平均変化量とし、この他に副次評価項目として体重および空腹時血糖値などが評価された。

 なお、「マンジャロ」は、イーライリリー・アンド・カンパニーが米国で5月13日、世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬として承認を取得し、6月7日より「Mounjaro」の製品名で販売を開始している。また、欧州でも9月15日に承認された。

 日本では、承認取得に先立ち、7月に日本イーライリリーと田辺三菱製薬が国内での「マンジャロ」の販売提携契約を締結した。田辺三菱製薬が流通・販売を行い、情報提供活動については、日本イーライリリーと田辺三菱製薬が共同で行うとしている。

マンジャロ 製品概要

販売名 マンジャロ皮下注2.5mgアテオス
マンジャロ皮下注5mgアテオス
マンジャロ皮下注7.5mgアテオス
マンジャロ皮下注10mgアテオス
マンジャロ皮下注12.5mgアテオス
マンジャロ皮下注15mgアテオス
一般名 チルゼパチド
効能又は効果 2型糖尿病
用法及び用量 通常、成人には、チルゼパチドとして週1回5mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回2.5mgから開始し、4週間投与した後、週1回5mgに増量する。
なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量できる。ただし、最大用量は週1回15mgまでとする。
製造販売承認取得日 2022年9月26日

添付文書・インタビューフォーム (医薬品医療機器総合機構)
マンジャロ皮下注2.5mgアテオス/マンジャロ皮下注5mgアテオス/マンジャロ皮下注7.5mgアテオス/マンジャロ皮下注10mgアテオス/マンジャロ皮下注12.5mgアテオス/マンジャロ皮下注15mgアテオス

Efficacy and safety of tirzepatide monotherapy compared with dulaglutide in Japanese patients with type 2 diabetes (SURPASS J-mono): a double-blind, multicentre, randomised, phase 3 trial (Lancet Diabetes & Endocrinology 2022年7月29日)
Safety and efficacy of tirzepatide as an add-on to single oral antihyperglycaemic medication in patients with type 2 diabetes in Japan (SURPASS J-combo): a multicentre, randomised, open-label, parallel-group, phase 3 trial (Lancet Diabetes & Endocrinology 2022年7月29日)
Efficacy and safety of a novel dual GIP and GLP-1 receptor agonist tirzepatide in patients with type 2 diabetes (SURPASS-1): a double-blind, randomised, phase 3 trial (Lancet 2021年6月26日)
Effect of subcutaneous tirzepatide vs placebo added to titrated insulin glargine on glycemic control in patients with type 2diabetes: the SURPASS-5 randomized clinical trial (JAMA 2022年2月F8日)

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[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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