GIP/GLP-1デュアル受容体作動薬「チルゼパチド」 2型糖尿病患者でインスリンに対しHbA1c低下と体重減少で優越性を示す

2021.11.05
 イーライリリー・アンド・カンパニーは、心血管イベント(CV)発症リスクの高い成人2型糖尿病患者を対象としたSURPASS-4試験の詳細な結果から、GIP/GLP-1デュアル受容体作動薬「チルゼパチド」の3用量(5mg、10mg、15mg)全群にわたり、インスリングラルギン漸増投与群と比較し、ベースラインからのHbA1c低下および体重減少に対する優越性が示されたと発表した。詳細は「Lancet」に掲載された。
 新たに公開されたデータでは、SURPASS-4試験で被験者のHbA1cおよび体重コントロールが最長2年間維持されたことが示された。

心血管リスクの高い成人2型糖尿病患者で、チルゼパチドはインスリングラルギンに対し優越性を示した

 チルゼパチドは、2型糖尿病治療のために開発されている新しいクラスの治療薬であり、グルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の両インクレチンの作用を単一分子に統合した新規の週1回投与GIP/GLP-1デュアル受容体作動薬。

 SURPASS-4試験は、これまでに完了したチルゼパチドを2型糖尿病の治療薬として検討する第3相プログラムのなかで、最大かつ最長の臨床試験。主要評価項目は52週時に測定されたが、被験者は104週まで、または試験終了まで治療を継続した。同試験の終了タイミングは、CVリスクを評価するために必要な主要心血管イベント(MACE)のデータ収集状況により決定された。

 新たに公表された52週以降のデータから、チルゼパチドによりHbA1cおよび体重の一貫したコントロールが最長2年間維持されることが示された。

 有効性estimand*の評価から、52週時で、インスリングラルギン投与群の結果(HbA1c1.44%低下、体重1.9kg(2.2%)増加)に対し、チルゼパチド最高用量群(15mg)ではHbA1cが2.58%低下し、体重が11.7kg(13.0%)減少した。

 全試験期間を通して評価したチルゼパチドの全体的な安全性プロファイルは、52週時に評価した安全性の結果と同様であり、104週時まで新たな所見は認められなかった。もっとも多く報告された有害事象は消化器関連であり、通常、投与量の増量期間中に認められ、時間の経過とともに減少した。

 ギリシャのIatriko Paleou Falirou Medical Center糖尿病診療科長およびセンター長でありSURPASS-4試験の治験責任医師であるJohn Doupis氏は次のように述べている。
 「2型糖尿病の治療に対するチルゼパチドの潜在的な影響の探索を継続するなかで、最初の52週間の治療期間を過ぎても、2年後まで継続したHbA1cおよび体重のコントロールが示されたことは、私たちの励みになります」

* 治験薬の投与中止または持続性重症高血糖のためのレスキュー治療を行うまでの有効性を示す。

チルゼパチドは試験期間を通じて、安定した血糖値の改善、体重減少、安全性を示した

 SURPASS-4試験は、心血管イベント発症リスクが高く、1~3種類の経口血糖降下薬(メトホルミン、スルホニルウレア系薬剤またはSGLT-2阻害剤)による治療を受けている2,002人の成人2型糖尿病患者を対象に、チルゼパチドの3用量(5mg、10mg、15mg)の安全性および有効性をインスリングラルギン漸増投与と比較した非盲検国際共同試験。

 無作為割付された全被験者のうち、1,819人(91%)が主要評価項目である52週時の評価を終え、1,706人(85%)が治験薬の投与を完了した。試験期間の中央値は85週間であり、202名(10%)の被験者は2年間の治療を完了した。

 被験者の糖尿病の平均罹病期間は11.8年、ベースラインのHbA1cは8.52%、ベースラインの体重は90.3kg。85%以上の被験者が心血管系イベントの既往を有していた。インスリングラルギン群では、空腹時血糖値が100mg/dLに到達することを目標に、treat-to-targetの治療アルゴリズムに従いインスリン投与量を漸増した。インスリングラルギンの開始用量は1日10単位、52週時の平均投与量は1日43.5単位だった。

 SURPASS-4試験は、主要評価項目および主な副次評価項目を達成した。52週時の有効性estimandおよび治療方針estimand*を用いたいずれの評価でも、チルゼパチドの3用量(5mg、10mg、15mg)全群にわたり、インスリングラルギンに対するHbA1c低下および体重減少の統計学的優越性が示された(主要評価項目)。

* 治験薬のアドヒアランスや持続性重症高血糖のためのレスキュー治療の導入に関わらず評価した有効性を示す。

 有効性estimandの詳細な結果は以下の通り――。

⚫ HbA1c低下:-2.24%(5mg)、-2.43% (10mg)、-2.58%(15mg)、-1.44%(インスリングラルギン)
⚫ 体重変化:-7.1kg(-8.1%、5mg)、-9.5kg(-10.7%、10mg)、-11.7kg(-13.0%、15mg)、+1.9kg(+2.2%、インスリングラルギン)
⚫ HbA1cが7%未満:81%(5mg)、88%(10mg)、91%(15mg)、51%(インスリングラルギン)
⚫ HbA1cが5.7%未満(第1種の過誤は制御していない):23%(5mg)、33%(10mg)、43%(15mg)、3%(インスリングラルギン)

 治療方針estimandの評価で、チルゼパチドの3用量(5mg、10mg、15mg)全群にわたり、52週時のHbA1c低下および体重減少の優越性が示された。詳細な結果は以下の通り――。

⚫ HbA1c低下:-2.11% (5mg)、-2.30%(10mg)、-2.41%(15mg)、-1.39%(インスリングラルギン)
⚫ 体重変化:-6.4kg(5mg)、-8.9kg(10mg)、-10.6kg(15mg)、+1.7kg(インスリングラルギン)
⚫ HbA1cが7%未満:75%(5mg)、83%(10mg)、85%(15mg)、49%(インスリングラルギン)探索的解析で、チルゼパチドの被験者は、HbA1cと体重コントロールを最大2年間維持した。
⚫ 52週時と104週時のHbA1cの平均値:
・ 52週時(N=1,750):6.3%(5mg)、6.1%(10mg)、6.0%(15mg)、7.1%(インスリングラルギン)
・ 104週時(N=199):6.4%(5mg)、6.1%(10mg)、6.1%(15mg)、7.5%(インスリングラルギン)
⚫ 52週時と104週時の体重変化:
・ 52週時(N=1,755):-7.1kg(-8.1%、5mg)、-9.5kg(-10.7%、10mg)、-11.7kg(-13.0%、15mg)、+1.9kg(+2.2%、インスリングラルギン)
・ 104週時(N=202):-5.8kg(-8.6%、5mg)、-10.4kg(-10.8%、10mg)、-11.1kg(-12.8%、15mg)、+2.3kg(+2.3%、インスリングラルギン)

 54mg/dL未満の低血糖は、全試験期間を通じてチルゼパチド群で8.8%(5mg)、6.1%(10mg)、8.0%(15mg群)、インスリングラルギン群で19.1%に報告された。低血糖の発現は、スルホニルウレア系薬剤を基礎治療として使用していた被験者により多く認められた。

 追加の探索的評価項目では、チルゼパチドの3用量(5mg、10mg、15mg)全群で、空腹時脂質プロファイルのベースラインから52週時の良好な変化が示された。具体的には、チルゼパチドの最高用量群(15mg)にて、総コレステロールが5.6%減少し、中性脂肪が22.5%減少し、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールが7.9%減少し、超低比重リポ蛋白(VLDL)コレステロールが21.8%減少し、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールが10.8%増加した。

 全試験期間を通してチルゼパチド群でもっとも多く報告された有害事象は消化器関連であり、概して軽度から中等度だった。同試験のチルゼパチド投与群(それぞれ5mg、10mg、15mgの順)では、悪心(12%、16%、23%)、下痢(13%、20%、22%)、嘔吐(5%、8%、9%)がインスリングラルギン投与群(悪心2%、下痢4%、嘔吐2%)に比べて多く認められた。全試験期間での有害事象に起因する治療中止割合は、7.3%(5mg)、7.9%(10mg)、8.9%(15mg)、1.9%(インスリングラルギン)だった。

 安全性解析では、複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中および不安定狭心症による入院)であるMACE-4と判定された被験者を評価した。SURPASS-4試験では、チルゼパチドの併合群とインスリングラルギン群の間に心血管リスクの増加は認められず、ハザード比は0.74(95%信頼区間0.51~1.08)だった。

Tirzepatide versus insulin glargine in type 2 diabetes and increased cardiovascular risk (SURPASS-4): a randomised, open-label, parallel-group, multicentre, phase 3 trial(Lancet 2021年10月18日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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