週1回投与デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」を持効型インスリンに上乗せ

2022.02.24
グラルギン+GIP/GLP-1受容体作動薬「tirzepatide」で2型患者の血糖改善

 持効型インスリンのグラルギンに、新規GIP/GLP-1受容体作動薬であるtirzepatideを上乗せすることにより血糖コントロールが改善することを示すデータが、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に2月8日掲載された。ドイツの糖尿病臨床研究グループ「Gemeinschaftspraxis für Innere Medizin und Diabetologie」のDominik Dahl氏らが報告した。

 Tirzepatideは、週1回投与型のGIP/GLP-1受容体デュアルアゴニスト。Dahl氏らの報告は、tirzepatideの第3相臨床試験として8ヵ国、45の医療機関が参加し行われた研究の結果である。この研究では、2019年8月30日~2020年3月20日に、インスリングラルギンを使用しているものの血糖管理不良の成人2型糖尿病患者475人を登録。無作為に4群(tirzepatideを5mg/週、10mg/週、15mg/週、およびプラセボ)に分けて、2021年1月13日まで追跡し、安全性と有効性を検討した。なお、tirzepatideは2.5mg/週で開始し、4週ごとに2.5mgずつ増量した。

 ベースライン時の患者背景は、平均年齢60.6±9.9歳、女性44.4%、HbA1c8.31±0.85%だった。また、糖尿病罹病期間は平均12.6~14.1年の範囲で、体重は94.2~96.0kg、グラルギン投与量は0.32~0.36IU/kg/日であり、80.8~85.3%にメトホルミンが処方されていた。

 Tirzepatideを週に5mg投与する群で10%、10mg群で12%、15mg群で18%、およびプラセボ群で3%が脱落し、全体で451人(94.9%)が40週間の介入を終了した。

 介入終了時点のHbA1cをベースライン値と比較すると、5mg群は-2.11%、10mg群-2.40%、15mg群-2.34%、プラセボ群-0.86%だった。HbA1c変化量をプラセボ群と比較すると、5mg群-1.24%(95%信頼区間-1.48~-1. 01)、10mg群-1.53%(同-1.80~-1.27)、15mg群-1.47%(同-1.75~-1.20)であり、いずれも有意だった(全てP<0.001)。また、HbA1c7.0%未満に到達した患者の割合は、5mg群87.3%、10mg群89.6%、15mg群84.7%、プラセボ群34.5%だった。

 体重の変化は、5mg群-5.4kg、10mg群-7.5kg、15mg群-8.8kg、プラセボ群1.6kgだった。体重変化量をプラセボ群と比較すると、5mg群-7.1kg(95%信頼区間-8.7~-5.4)、10mg群-9.1kg(同-10.7~-7.5)、15mg群-10.5kg(同-12.1~-8.8)であり、いずれも有意だった(全てP<0.001)。

 有害事象として、下痢(tirzepatide群12.1~20.8%、プラセボ群10.0%)や悪心(同順に12.9~18.3%、2.5%)などが認められた。

 著者らは、「インスリングラルギンを用いても血糖管理が不十分な2型糖尿病患者に対し、tirzepatideを上乗せすることで40週間後の血糖管理が有意に改善した。本研究の結果は、血糖管理不良な糖尿病患者を診る臨床医に向けて、有用な情報と言えるだろう」と述べている。

 なお、一部の著者が、tirzepatideのメーカーであり、研究資金を提供したイーライリリー社を含む、製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。

[HealthDay News 2021年2月10日]

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