高齢糖尿病患者へのGLP-1受容体作動薬の使用は自殺リスクと関連なし
GLP-1RAは、適応拡大やガイドラインにおける推奨グレードの格上げなどを背景として、処方件数の増加が続いている。これにともない、GLP-1RAの使用量増加と自殺念慮や自殺行動のリスク増大との間の潜在的な関連性への懸念が浮上している。ただし、因果関係を評価可能なエビデンスは存在しない。
この状況を背景としてTang氏らは、自殺死亡率の高い高齢者層に焦点を当て、高齢2型糖尿病患者におけるGLP-1RA処方と自殺念慮や自殺行動との関連を、SGLT2阻害薬(SGLT2i)およびDPP-4阻害薬(DPP-4i)処方との比較により検討した。
2017年1月~2020年12月の米国内のメディケア管理データを用い、過去の自殺念慮や自殺行動の記録がない66歳以上の2型糖尿病患者から、GLP-1RA、SGLT2i、DPP-4iのいずれかで初期治療が行われていた患者を抽出。傾向スコアにより背景因子をマッチさせた、1対1のデータセットを2件(GLP-1RA対SGLT2iと、GLP-1RA対DPP-4i)作成した。
主要評価項目を自殺念慮と自殺行動の複合アウトカムとして、Cox比例ハザード回帰モデルにて、ハザード比を求めた。GLP-1RAとSGLT2iの比較のためのデータセットのサンプル数は2万1,807組、GLP-1RAとDPP-4iの比較のためのサンプル数は2万1,402組だった。
解析の結果、まずSGLT2iと比較したGLP-1RAに関連する自殺念慮や自殺行動のハザード比は1.07(95%信頼区間0.80~1.45)、千人年当たりの率差は0.16(同-0.53~0.86)であり有意でなかった。
次に、DPP-4iと比較した場合のハザード比は0.94(0.71~1.24)、千人年当たりの率差は-0.18(-0.92~0.57)であって、やはり非有意だった。
なお、全体として、報告されていたイベント数自体が少ないことや、データ欠如のために未調整の交絡因子(例えばBMI)が存在することなどが、研究の限界点として挙げられた。
著者らは、「われわれの研究では、メディケアを受給している高齢2型糖尿病患者において、GLP-1RAによる自殺念慮や自殺行動のリスク増大は認められなかった。ただし、研究手法の限界から、推定されたハザード比の信頼区間は狭いとは言えず、わずかな有害事象の可能性を完全には排除できなかった」と述べている。
[HealthDay News 2024年7月16日]
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