2型糖尿病の第2選択薬としてSGLT2阻害薬は効果的か? DPP-4阻害薬やSU薬と比較 7.5万例を検討
第2選択薬としてのSU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の有効性を比較
メトホルミンに追加する第2選択薬として、SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の有効性を比較したエミュレーション研究の結果を、英国のロンドン大学が発表した。
SGLT-2阻害薬は、SU薬やDPP-4阻害薬に比較し、平均HbA1c、BMI、収縮期血圧をより低下させ、DPP-4阻害薬と比較したときの心不全による入院、およびSU薬と比較したときの腎症の進行を軽減する効果がより高いことが示された。
研究は、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のPatrick Bidulka氏らによるもので、研究成果は「BMJ」に掲載された。
研究グループは今回、メトホルミンに追加する3クラスの経口血糖降下薬[SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬]の有効性について、比較試験を模倣したコホート研究(標的試験エミュレーション:target trial emulation)として比較した。
対象となったのは、第2選択の経口薬として、SU薬[2万5,693例、33.9%]、DPP-4阻害薬[3万4,464例、45.5%]、SGLT-2阻害薬[1万5,582例、20.6%]を追加した2型糖尿病の成人患者[計7万5,739例]。研究グループは、2015~21年のイングランドのプライマリケア・病院・死亡のデータにリンクし解析した。
主要評価項目は、ベースラインと1年間の追跡調査のHbA1cの絶対変化、副次評価項目は、1年後と2年後のBMI、収縮期血圧、推定糸球体濾過率(eGFR)の変化、2年後のHbA1cの変化、eGFRの40%以上の低下までに要した時間、主要な腎有害事象、心不全による入院、主要な心血管事象(MACE)、全死亡率など。
SGLT-2阻害薬はHbA1c、BMI、血圧をより低下 心不全や腎臓病のリスクも減少
その結果、SGLT-2阻害薬は、DPP-4阻害薬やSU薬と比較し、ベースラインから1年間の平均HbA1c値を低下させる効果はより高かった。SGLT-2阻害薬のベースラインから1年間のHbA1c変化の平均差は、SU薬との比較でマイナス2.5mmol/mol[95%CI マイナス3.7~マイナス1.3mmol/mol]、DPP-4阻害薬との比較でマイナス3.2mmol/mol[同 マイナス4.6~マイナス1.8)mmol/mol]だった。
※HbA1c換算:NGSP値 (%) = (IFCC値 (mmol/mol) + 23.52) ÷ 10.93 ※小数点第2位以下は切り上げ
BMIおよび収縮期血圧の低下でも、SGLT2阻害薬はSU薬またはDPP-4阻害薬よりも有効であることが示された。
心不全による入院のリスクでも、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬に対するハザード比(HR)は0.32[95%CI 0.12~0.90]、SU薬に対しては0.46[同 0.20~1.05]となり、より効果があることが示された。
eGFR 40%以上の低下についても、SGLT2阻害薬はより腎臓の保護効果があることが示され、SU薬に対するHRは0.42[95%CI 0.22~0.82]、DPP-4阻害薬に対しては0.64[推定HR、同 0.29~1.43]になった。
ただし一部の副次評価項目については、SGLT-2阻害薬がより効果的であるというエビデンスは示されなかった。主要心血管イベント(MACE)のHRは、SU薬に対して0.99[95%CI 0.61~1.62]、DPP-4阻害剤に対して0.91[0.51~1.63]だった。
また、DPP-4阻害剤に対する推定ハザード比では高い不確実性が示された[0.64、0.29~1.43]。
「38ヵ国で行われた2型糖尿病患者の第2選択治療に関する最近の研究では、もっとも一般的に使用されている経口薬は、DPP-4阻害薬(48.3%)、SU薬(40.9%)、SGLT-2阻害薬(8.3%)と報告されている。このうちSGLT2阻害薬はより新しく、より高価なクラスの薬剤であり、イングランドではCVDの既往歴がある患者、CVDのリスクが高い患者、あるいは腎臓病のある患者など、一部の2型糖尿病患者に対して第2選択薬として優先して使用するとことが推奨されている」と、研究者は述べている。