6.高齢期女性:加齢性疾患の病態から診断・治療まで ─骨粗鬆症・サルコペニア・認知症─

2021.09.15
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特集■女性のライフステージと糖尿病
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6.高齢期女性:加齢性疾患の病態から診断・治療まで
─骨粗鬆症・サルコペニア・認知症─
Vol.38 No.5(2021年9・10月号)pp.561-567

2021年9・10月号 目次

髙士祐一 Takashi, Yuichi
福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科学

はじめに

 日本は高齢化社会でもなければ,高齢社会でもない.2007年よりわが国は,「超高齢社会」に突入している.高齢期を迎えた女性に好発する加齢性疾患として骨粗鬆症・サルコペニア・認知症が挙げられる.これらの疾患は糖尿病を有すると,その発症および進展が促進されることが明らかとなりつつある.日本糖尿病学会が発刊している「糖尿病治療ガイド 2020-2021」では,「糖尿病治療の目標」が刷新された.すなわち,「高齢化などで増加する併存症の予防・管理」が追記され,最終目標が「健康な人と変わらない人生」とされた1).従来の糖尿病合併症が抑制されてきた一方で,高齢化などにより増加する骨粗鬆症・サルコペニア・認知症などの併存症の存在が近年問題となっている.いまからちょうど100年前にインスリンが発見されるまでは,糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態の克服が糖尿病治療における大きな課題であった.次いで,DCCTやUKPDSが発表された頃は,網膜症や腎症などの細小血管症の克服に向けた取り組みが展開された.その後,ACCORD・ADVANCE・VADTに代表されるように,動脈硬化性疾患の克服を目指して時代は進んでいった.この間,日本人糖尿病患者の死亡原因も大きく変遷した.虚血性心疾患や脳血管障害が減少し,悪性新生物および感染症が増加してきている2).また,るいそう,ないし低BMIの高齢者では,総死亡率が高いことも明らかとなり3),食事療法の考えかたはより柔軟に個別の対応が求められるようになりつつある.こうした背景をふまえると,骨粗鬆症・サルコペニア・認知症・悪性新生物・感染症など高齢化で増加する広範な併存症の管理が求められる,まさに「糖尿病新時代」に突入したように思える.糖尿病の存在が,これらの疾患の発症や進展に寄与していることはかならずしも確証されているわけではないものの,糖尿病とこれらの疾患との関係性は近年急速に明らかになってきている.
 本稿では,加齢性疾患として特に骨粗鬆症・サルコペニア・認知症の3疾患について,その病態・診断・治療を概説し,糖尿病との関係性について考察する.

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