糖尿病網膜症の疫学と診断
2022.01.15
佐々木真理子* 1〜3 Sasaki, Mariko
* 1 国家公務員共済組合連合会 立川病院 眼科
* 2 慶應義塾大学医学部 眼科学教室
* 3 国立病院機構東京医療センター 眼科
はじめに
International Diabetes Federation(IDF)によれば,世界における2000年の糖尿病有病率は4.6%,患者人口は1億5,100万人であったが,2021年にはすでに9.8%,5億3,660万人に増加し,2045年には11.2%,7億8,370万人に達すると予想されている 1).糖尿病患者の爆発的な増加に伴い,糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫による視覚障害は,公衆衛生上,世界的に解決すべき課題となっている.そのため,これらの眼合併症を伴う患者の動向や危険因子を把握することが重要となる.一方,眼科領域における糖尿病網膜症の治療は,小切開硝子体手術をはじめとする治療技術の進歩により,失明を免れるための治療から,良好な視力を維持するための治療へと転換してきている.これらの技術の進歩も寄与し,長らく後天性視覚障害原因の1位であった糖尿病網膜症は,2017年には3位に後退した.また,失明の回避がある程度可能となったことから,多くの患者に中等度の視力低下をきたす糖尿病黄斑浮腫が注目されている.光干渉断層計(OCT)および光干渉断層血管撮影(OCTアンギオグラフィー)などのイメージング技術の進歩は,黄斑浮腫の早期発見を可能にし,血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬治療がnew standardとして行われている.
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