CKDと不眠症、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群の関係性

2025.08.29

第68回日本腎臓学会学術総会
シンポジウム20
「CKD と睡眠」
発表日:2025年6月22日
演題:「慢性腎臓病(CKD)の睡眠障害」
演者:村田智博(三重大学医学部附属病院 腎臓内科)
共同演者:小田圭子、齋木良介、平林陽介、片山鑑、土肥薫

 近年、腎臓病領域において、睡眠障害や概日リズムの乱れが腎機能の悪化、心血管イベント、QOLの低下に深く関与していることが明らかになりつつある。これまで腎臓病診療の中では十分に注目されてこなかった「時間」や「睡眠」という側面が、予後に影響を及ぼす重要な因子として注目されるようになってきた。
 こうした中、三重大学医学部附属病院腎臓内科の村田智博氏は、第68回日本腎臓学会学術総会(2025年6月20~22日開催)において、「慢性腎臓病(CKD)の睡眠障害」をテーマに講演を行った。

睡眠不足による健康リスクとCKD患者への影響

 睡眠時間が短いことによる健康リスクは、一般に、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、認知症、うつ病などの発症リスクや死亡リスクの上昇が知られている1)~6)。CKD患者においては『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』で「CKD患者に適度な睡眠時間を確保することが推奨されるか?」というクリニカルクエスチョンに対し、「適度な睡眠は、透析導入やCVD(心血管疾患)の発症を減らす可能性があり、適度な睡眠時間を確保することを提案する」と推奨レベル2Dの形で明記されている。

 では、CKDと睡眠障害の関連は具体的にどのようになっているのか。村田氏は、不眠症、SAS(睡眠時無呼吸症候群)、RLS(レストレスレッグス症候群/むずむず脚症候群)の3疾患について、CKDとの関係を分析し紹介した。

 不眠症に関しては、不眠症がある場合のCKDのリスク比は1.24、逆に、CKDがある場合の不眠症のリスク比は1.14であった7)。また、不眠症の有病割合は、保存期CKDでは36~59%8)9)、透析患者では25~80%8)10)11)、移植患者では8~46%12)13)とされており、一般人口の10~15%14)と比較しても腎不全患者での不眠の頻度の高さが明らかとなっている。

 CKD患者の不眠症の頻度の高さには、代謝異常や薬剤、身体・精神症状、ライフスタイル、概日リズム・体内時計の乱れなどが関与していると考えられる。代謝異常は、貧血、鉄欠乏、カルシウム・リン代謝の異常、尿毒症性皮膚掻痒症、筋けいれん、神経痛などが要因とされ、薬剤についてはβアゴニスト・アンタゴニスト、抗うつ薬、利尿薬、グルココルチコイドなど免疫抑制薬の影響が考えられる。

 不眠症の診断は、①入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒がある②環境に関わらず眠れない状態が続いている③日中に悪影響を及ぼすといったことからなされる。病歴や嗜好品などに関する問診を行うほか、患者自身による「睡眠日誌」やスクリーニングツールであるPSQIスコア(ピッツバーグ睡眠質問票)を活用することも有用だ。
 治療の目標は、睡眠の質の主観的・客観的な向上、日中の眠気や倦怠感および機能の改善で、これに向けて薬物療法と非薬物療法の両面からのアプローチが必要となる。

 薬物療法においては、「短期の不眠に適すること」や「睡眠薬の利益と害、コストを患者と共有し、共同意思決定を行うこと」が推奨される。
 睡眠薬は、GABA受容体作動薬(ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系)、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体作動薬に分類される。ベンゾジアゼピン系薬剤には、死亡リスクの増加(HD患者)15)16)、筋弛緩、健忘、持ち越し効果17)などの懸念があり、連用には注意が必要である。メラトニン受容体作動薬については、即効性は乏しいものの、より自然な形で睡眠を促すことができる。

SAS、RLSも腎不全に大きく関連

 次にCKDとSASとの関連性を述べる。SASがある場合のCKDリスク比は1.66、CKDがある場合のSASのリスク比は1.56と言われている18)。有病割合は、保存期CKDで31~65%19)~22)、透析患者で25~80%19)~21)、移植患者で8~46%23)24)、一般人口では9~24%25)となっている。

 SASは、睡眠の断片化、日中の過度な眠気、認知機能の低下、QOLの低下をもたらす。SASによる低酸素血症は、腎臓内部の酸素濃度を低下させ、さらにそこから酸化ストレス、炎症を介して尿細管間質障害を引き起こす可能性がある。また、交感神経系の亢進を通じて血管収縮や糸球体高血圧、過ろ過が進行し、CKD悪化につながるメカニズムも報告されている。

 逆に、CKDが存在すると、化学受容体の感度が亢進することによる換気中枢の不安定性が起こる。また、顔面・頸部への体液シフト、体液過剰による咽頭狭小化や上気道の虚脱などが起こり、それがSASの原因となり得る。さらには、尿毒症性ミオパチー、尿毒性ニューロパチーが気道閉塞を引き起こし、これがSASの誘因となる可能性も示唆されている。

 SASのスクリーニングには、いびき、日中の疲れ、家族からの呼吸停止の指摘、高血圧、BMI、首回りのサイズなどを評価し、4点以上でSASが疑われるSTOP-Bangの質問票や、日中の眠気の程度を評価するEpworth Sleepiness Scaleが用いられる。確定診断にはポリソムノグラフィーが使われる。

 治療としては、まず体重のコントロール、そして適度な運動、睡眠時の姿勢、アルコールや睡眠剤の中止が推奨される。CPAP療法(Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法)は、夜間の無呼吸・低呼吸、日中の眠気、パフォーマンスを改善してQOLを向上させ、血圧低下26)~28)にも寄与する。その他、耳鼻科や口腔外科における口腔内デバイスの利用や手術29)~31)も選択肢となる。

 最後に、CKDとRLSの関係を述べる。RLSがある場合のCKDのリスク比は1.88、CKDがある場合のRLSのリスク比は1.73である32)。RLSの有病割合は、保存期CKDで9~37%33)34)、透析患者で15~30%34)35)、移植患者で5~7%33)36)、アジア人の一般人口では0.6~4%37)とされており、腎不全との関連が強い。

 RLSの背景には、腎不全であることによる脳内の鉄不足、あるいはグルタミン、アデノシン、ドパミンなどの神経伝達物質機能異常があると考えられている。これらにより、睡眠や日中の問題、不眠、疲労、気分障害などを引き起こす。

 非薬物療法による治療として、透析液の液温を下げる、有酸素運動、アロマテラピーマッサージ、リフレクソロジー、指圧、低周波電気刺激などがあげられる。誘因となる薬物(ドンペリドン、メトクロプラミド、nortyrptilline、ハロペリドール、リスペリドンなど)を服用している場合、中止が可能なものは中止し、鉄不足があれば補充することも治療法となる38)

 薬物療法としてはα2δリガンド、ドパミン受容体アゴニストが治療薬剤としてあげられる。ドパミン受容体アゴニストに関しては、連用に伴いかえってRLSの症状増悪を来すことがあるので、連用に関しては注意が必要である。

 終わりに村田氏は「睡眠障害とCKDは双方向性のリスクとなり得る。そのため、CKD患者を診る腎臓内科医は睡眠にも目を向けるべきであり、また逆も然りである。自分の手札を増やすという意味でも、これらの疾患に対応する策を学習し備えるべき。薬物療法については、今後さらなる臨床研究の進展を期待したい」と述べ、講演を締めくくった。

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[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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