糖尿病ラットができた:無から有が出た

  • 後藤 由夫 (東北大学名誉教授、東北厚生年金病院名誉院長)
2015.09.24
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1. ラット250匹を発注して開始

 1971年春の新卒者8名が入局するのを待って診療を始めた。インターン制度もなく実地の経験のない学士試験を通っただけの医局員なので、他の医局からいただいた講師の方々や古手の助手の方々は、日常診療のやり方を指導するのに大変であった。2年が過ぎて診療も軌道にのり実験室にも測定器が並ぶようになった。そこで遺伝の研究をやりたいという希望をもって入局した柿崎正栄助手に正常ラットから糖尿病ラットを作る実験計画を話した。柿崎助手は計画に同意し、日本クレア野川飼育場にWistar系ラットを250匹発注した。米国で研究していたとき、マロニービル7階にあった実験室の窓から下を見ると道路の向側にWistar研究所があり、脂肪組織の代謝に使用するラットはそこから購入していたので、Wistarラットには特別な思いを抱いていた。

 体重Kg当りグルコース2gとなるようにグルコース液を注射器に入れ、注射針の代わりに金属製のラット胃ゾンデをつけて胃内に注入した。血糖測定は、まだ簡易血糖測定器のない時代であったので、尻尾の先端を傷つけて血液0.05mlをハーゲドロンピペットで吸い取って除蛋白試薬に入れ、除蛋白した濾液にglucostat(Glucose-Oxidase)を反応させて比色定量した。負荷前、グルコース負荷後30分、60分、90分、120分と5回採血し、放尿したときにはTes-Tapeで尿糖をチェックした。この方式で筆者と柿崎助手は1973年10月2日から実験を始めた。GTTでは血糖がやや高値で特に60、90、120分値が高いものを選んで、1、2週後に再度GTTを行った。このようにして雄130匹、雌81匹の中から比較的GTTが正常より逸脱しいるもの雄9匹、雌9匹を選んで交配を行った。糖尿病のものはいなかった。次第にGTTを行うラットが増えたので柾木尚義医師にも手伝ってもらった。

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