MR拮抗薬「ケレンディア錠」発売 2型糖尿病を合併するCKDの適応を持つ唯一のMR拮抗薬

2022.06.02
 バイエル薬品は、2型糖尿病を合併するCKD(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者を除く)の適応を持つ唯一の非ステロイド型選択的MR拮抗薬として、「ケレンディア錠」(一般名:フィネレノン)を発売した。

心血管・腎臓障害の原因となる炎症・線維化を引き起こすMRの過剰活性化をターゲットに開発

 「ケレンディア錠」(一般名:フィネレノン)は、ドイツ・バイエル社が創製した1日1回経口投与の非ステロイド型選択的MR拮抗薬。同剤は、MRの過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。2型糖尿病でのMRの過剰活性化は、血糖コントロール不良などの代謝、血圧などの血行動態、炎症や線維化によって引き起こされる可能性のあるCKD(慢性腎臓病)の進行や心血管障害に関与すると考えられている。

 同剤は、MRに選択的に結合し、炎症や線維化を引き起こすMRの過剰活性化を抑えることにより、心血管および腎臓の障害を抑制する。2型糖尿病を合併するCKDの適応は、米国、欧州連合などでもすでに承認されている。

 「ケレンディア錠」は、2型糖尿病を合併するCKD患者計1万3,000人以上が参加した2つの大規模臨床試験(FIGARO-DKD、FIDELIO-DKD)のデータにもとづき承認された。

 FIGARO-DKD試験は、比較的重症度の低い集団を含むCKD患者が対象である一方、FIDELIO-DKD試験は、比較的進行したCKD患者が対象だった。

 各有効性主要評価項目で、ケレンディア群はプラセボ群と比べ、FIGARO-DKD試験では心血管複合エンドポイントの発現リスクを13%、FIDELIO-DKD試験では腎複合エンドポイントの発現リスクを18%それぞれ有意に低下させた。

 また、2試験より、「ケレンディア錠」の安全性プロファイルが示された。重大な副作用は高カリウム血症だった。2試験のデータは、医学誌「New England Journal of Medicine」に2021年8月および2020年10月にそれぞれ掲載されている。

 バイエル薬品は腎領域で、CKDの主要な合併症のひとつである腎性貧血の治療剤マスーレッド錠(一般名:モリデュスタットナトリウム)、およびCKDにおける高リン血症治療剤ホスレノール(同:炭酸ランタン水和物)を販売しており、新たに「ケレンディア錠」の提供を開始した。

 同社は、医療関係者向け腎領域の総合情報サイト「Renal CONNECT」など、デジタルを通じた腎領域製品の情報提供活動も積極的に推進していくとしている。

 なお、「ケレンディア錠」は、心不全および非糖尿病性CKDをそれぞれ対象とする第3相臨床試験が進行しており、同社は今後も、腎領域のアンメット・メディカル・ニーズに応えるために力を注いでいくとしている。

ケレンディア錠

ケレンディア錠 概要
販売名 ケレンディア錠10mg、ケレンディア錠20mg
一般名 フィネレノン (finerenone)
効能・効果 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病
ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。
用法・用量 通常、成人にはフィネレノンとして以下の用量を1日1回経口投与する。

eGFRが60mL/min/1.73m²以上:20mg
eGFRが60mL/min/1.73m²未満:10mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から4週間後を目安に20mgへ増量する。
製造販売承認日 2022年3月28日
薬価 ケレンディア錠10mg:149.10円/錠
ケレンディア錠20mg:213.10円/錠
(薬価基準収載日 2022年5月25日)
発売日 2022年6月2日
製造販売元 バイエル薬品株式会社

ケレンディア錠10mg/20mg(一般名:フィネレノン) 添付文書 インタビューフォーム (医薬品医療機器総合機構)

Cardiovascular Events with Finerenone in Kidney Disease and Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2021年12月9日)
Finerenone and Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2021年3月18日)
Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes (New England Journal of Medicine 2020年12月3日)
Finerenone — Halting Relative Hyperaldosteronism in Chronic Kidney Disease (New England Journal of Medicine 2020年12月3日)

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[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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