SGLT2阻害薬「ジャディアンス」がEUで慢性腎臓病の成人患者の治療薬として承認 2型糖尿病と心不全への適応に追加
2型糖尿病と心不全と慢性腎臓病は相互に関連する疾患
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、欧州委員会(EC)がSGLT2阻害薬「ジャディアンス」(一般名:エンパグリフロジン)を慢性腎臓病の成人患者の治療薬として承認したと発表した。
今回の承認により、EU内の4,700万人超の慢性腎臓病の患者に対する標準治療が進化し、慢性腎臓病の患者の全入院リスクの低下をもたらしたことで、医療システムへの負担を軽減する可能性があるとしている。
ジャディアンスは、すでに成人の慢性心不全および2型糖尿病への適応を取得しており、今回の承認により、相互に関連することの多い心腎代謝疾患のリスクを管理できる道が開かれる。心腎代謝疾患は、世界で10億人を超える人々に影響を及ぼしているとしている。
今回の承認は、慢性腎臓病でのSGLT2阻害薬の臨床試験としては大規模・広範囲の患者層を対象としたEMPA-KIDNEY試験の結果にもとづく。同試験では、ジャディアンスは腎疾患の進行または心血管死の相対リスクをプラセボと比較して28%低減した(HR 0.72、95%CI 0.64~0.82、P<0.000001 [絶対リスク減少率3.8%])。
また、同試験では、ジャディアンスはすべての入院の相対リスクをプラセボと比較して14%低減し、有意な低減効果を示した(HR 0.86、95%CI 0.78~0.95、p=0.0025 [絶対リスク減少率4.4%])。エンパグリフロジンの全般的な安全性データは、過去の所見とおおむね一致する結果となった。4,5
心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわる同じリスク因子と病理学的経路の多くを共有している。1つの系で機能不全が起こると他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては、心血管死のリスク上昇につながる。反対に、1つの系の健康状態を改善すれば、他の系にも好影響を与える。
欧州腎臓病患者連合(EKPF)のDaniel Gallego会長は、次のように述べている。
「今回の承認により、慢性腎臓病領域での大きなマイルストーンが達成されました。慢性腎臓病はサイレントキラーとも呼ばれる疾患で、社会全体で予防と早期発見を進めることは極めて重要です。今回、新たな治療選択肢が得られたことで、心腎代謝疾患や腎臓病の管理がさらに向上し、世界中で慢性腎臓病に苦しむ多くの人々に新たな希望をもたらし、生活の質を高める可能性があります」。
「慢性腎臓病は、2型糖尿病や心不全などの本疾患以外の心腎代謝疾患と密接に関係しているため、最適な治療をお届けするにはこれらの相互に関連する疾患群に包括的に取り組むことが不可欠です」と、イーライリリー・アンド・カンパニーでは述べている。
なお、日本でのジャディアンス錠の効能・効果は2型糖尿病、慢性心不全であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得されていない。また、慢性心不全に対する治療薬として承認されているのはジャディアンス錠10mg。
Empagliflozin in Patients With CKD (American Society of Nephrology (ASN) Congress 2022 - Kidney Week)
Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease (New England Journal of Medicine 2023年1月12日)
ジャディアンス錠10mgジャディアンス錠25mg添付文書 (医薬品医療機器総合機構)
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