SGLT2阻害薬「フォシーガ」 心不全の罹患期間にかかわらず循環器・腎・代謝疾患の併存状態でベネフィット

2023.06.07
 アストラゼネカは、SGLT2阻害薬「フォシーガ」について、第3相DELIVER試験の2つの解析結果を発表し、心不全(HF)の罹患期間にかかわらず、循環器・腎・代謝(CVRM)疾患のさまざまな併存状態での一貫したベネフィットが裏付けられたと発表した。詳細は、チェコのプラハで5月に開催された欧州心臓病学会心不全2023年総会で報告された。

SGLT2阻害剤「フォシーガ」の治療ベネフィットは心不全の罹患期間にかかわらず一貫

 アストラゼネカは、SGLT2阻害薬「フォシーガ」について、第3相DELIVER試験の2つの解析結果を発表し、心不全(HF)の罹患期間にかかわらず、循環器・腎・代謝(CVRM)疾患のさまざまな併存状態での一貫したベネフィットが裏付けられたと発表した。詳細は、チェコのプラハで5月に開催された欧州心臓病学会心不全2023年総会で報告された。

 第3相DELIVER試験の事前規定された解析として、左室駆出率(LVEF)が40%超の心不全患者でのフォシーガの治療効果を、HFの罹患期間(6ヵ月以内、6ヵ月超~12ヵ月以内、1年超~2年以内、2年超~5年以内、および5年超)別に検討した。

 その結果、フォシーガのベネフィットは、HFの罹患期間にかかわらず一貫していることが示された。さらに、高齢かつ1つ以上の併存疾患を有し、HF悪化および死亡率の高い、罹患期間が長期にわたるHF患者で、絶対利益が増加した(治療必要数(NNT):HF罹患期間5年超の患者と6ヵ月以内の患者との比較で24:32)。

 CVRM関連の併存疾患の有病率、およびさまざまな併存状態でのフォシーガに対する被験者の反応を評価した第3相DELIVER試験の事後解析結果も発表され、同時にJACC Heart Failureに掲載された。

 同解析結果によると、LVEFが40%超のHF患者では、5人中4人以上の割合で他のCVRM疾患を少なくとも1つ併発しており、5人中1人の割合でHFに加えて3つのCVRM疾患を併発していた。フォシーガは忍容性が良好であり、その治療ベネフィットはCVRM疾患の併存状態に関係なく一貫していたとしている。

 ハーバード大学医学部およびブリガム アンド ウイメンズ病院の内科学教授で、第3相DELIVER試験の主任治験責任医師を務めるScott Solomon氏は次のように述べている。
 「現在の診療では、罹患期間が長期にわたる心不全患者は、新しい治療を追加しても反応しない、または忍容性が低い進行性疾患に罹患しているとみなされる可能性がある。第3相DELIVER試験のデータは、SGLT2阻害剤であるダパグリフロジンによる治療ベネフィットは、心不全の罹患期間にかかわらず一貫しており、患者にとって治療が決して遅過ぎることがないことを示している」。

 「第3相DELIVER試験の結果から、心不全患者が2型糖尿病や慢性腎臓病といった他のCVRM疾患を併発していることがいかに一般的であるかが浮き彫りになった。今回発表された新たな解析は、あらゆる心腎疾患に対してフォシーガがベネフィットをもたらし、心不全や他のCVRM疾患を有する患者の治療を根本的に変える可能性を示している」と、同社では述べている。

 これらの知見は、以前に報告された第3相DELIVER試験および第3相DAPA-HF試験の結果にもとづいている。これらの試験は、HF患者に対する基礎治療薬としてフォシーガの使用を支持するエビデンスを提供し、駆出率(EF)にかかわらず死亡率の低下を示す唯一の心不全治療薬としてフォシーガを確立しているとしている。

 なお、第3相DELIVER試験でのフォシーガの安全性および忍容性プロファイルは、これまでに十分確立されているフォシーガの安全性プロファイルと一致した。

 DELIVER試験では、2型糖尿病の有無を問わず、左室駆出率が40%超の心不全患者の治療として、フォシーガの有効性をプラセボとの比較で評価した。6,263例の患者が対象で、心不全のみは少なく(13%)、31%は心不全に加え1つのCVRM疾患、36%は心不全に加え2つのCVRM疾患、20%は心不全に加え3つのCVRM疾患に罹患していた。主要複合評価項目は、心血管死、心不全による入院、または心不全による緊急受診のいずれかが最初に発生するまでの期間。

 また、DAPA-HF試験は、2型糖尿病合併の有無にかかわらず、HFrEF(左室駆出率が低下した心不全、収縮性心不全)患者4,744例を対象とし、フォシーガ 0mgを1日1回、標準治療に追加投与したときの効果を、プラセボとの比較により評価するようデザインされた。主要複合評価項目は、心不全の悪化(入院またはそれに相当するイベント[心不全による緊急受診])の初回発生までの期間または心血管死。フォローアップ期間の中央値は18.2ヵ月。

Patient Characteristics, Outcomes, and Effects of Dapagliflozin According to the Duration of Heart Failure: A Prespecified Analysis of the DELIVER Trial (Heart Failure 2023 2023年5月)
Cardio-Renal-Metabolic Overlap, Outcomes, and Dapagliflozin in Heart Failure with Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction (JACC Heart Failure 2023年5月24日)
Dapagliflozin in Heart Failure with Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction (New England Journal of Medicine 2022年9月22日)
Dapagliflozin across the range of ejection fraction in patients with heart failure: a patient-level, pooled meta-analysis of DAPA-HF and DELIVER (Nature Medicine 2022年8月27日)

フォシーガ錠5mg、フォシーガ錠10mg 添付文書 医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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