第82回米国糖尿病学会(ADA2022) ハイライト (1) デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬の第3相試験結果
2022.06.15
第82回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA2022)が、2022年6月3日~7日にニューオーリンズで開催された。オンデマンドは9月5日まで公開される予定。
米国糖尿病学会(ADA)は、米国の1億3,300人が糖尿病か前糖尿病(prediabetes)だと推定している。過去20年で糖尿病と診断された米国人の数は2倍以上に増えた。
米国の糖尿病治療のスタンダードとなる「ADA 2022 Standards of Medical Care in Diabetes」を3月に発表した。糖尿病の標準治療のほぼすべてのセクションを改訂した。主な改訂点は下記の通り。
▼2型糖尿病と前糖尿病のスクリーニング検査の対象が、従来の45歳から35歳に下げられた。 ▼薬物療法では従来はメトホルミンを第1選択薬としてきたが、メトホルミンの追加/代替として、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬を使用することを可能性にした。 ▼高齢患者を含む過体重や肥満の成人患者を対象に、糖尿病とその合併症を防ぐために、生活スタイル行動改善プログラムを実施する必要がある。経口セマグルチドやヒドロゲルなどの肥満症を適応とした新薬についても情報を共有。 ▼糖尿病患者に対し、COVID-19やインフルエンザなどのワクチン接種を奨励。 ▼とくに高齢者の低血糖は認知症のリスクを高めるとして、低血糖を評価するためのセクションを新設。 ▼1型糖尿病患者および重度のインスリン欠乏症をともなう2型糖尿病患者の低血糖を予防するため、血糖コントロールの一定期間の緩和について提案。 ▼糖尿病患者と介護者がCGM(持続血糖モニター)などのデバイスを選択できるよう支援する必要がある。そのために継続的な患者教育が必要で、デバイスと得られるデータを使用するスキルを習得させる重要性を強調。 |
自動インスリン送達(AID)システムが1型糖尿病患者にとって安全で効果的な治療法であることを実証した、CREATE試験の結果を報告。オープンソースのAIDとセンサー強化ポンプ療法(SAPT)を比較したランダム化比較試験(RCT)の結果。
このAIDシステムは、インスリンポンプ、持続血糖モニター(CGM)、血糖値を目標範囲に保つために5分ごとにインスリン投与を自動的に調整するアルゴリズムを組み合わせたもの。 目標範囲時間(TIR)の平均は、AID群は成人で74.5±11.9%(P<0.001)、小児で67.5±11.5%(P<0.001)と改善したが、SAPT群では変化はなかった。また、AID群のTIR達成は60%だったが、SAPT群では15%にとどまった。 |
週1回投与のデュアルGIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」の安全性と有効性を評価した、最初の第3相試験であるSURMOUNT-1で得られた知見が発表された。
肥満または過体重で糖尿病ではない2,539人が登録され、チルゼパチドにより体重の16~22.5%を減らし、平均体重減少は、最高用量(15mg)では52ポンド(23.6kg)で、10mg用量では49ポンド(22.2kg)、5mg用量では35ポンド(15.9kg)となった。 「肥満症患者の10人中約9人がチルゼパチドの使用により体重を減らした。肥満患者にとって効果的な治療選択肢を潜在的に拡大するための重要な一歩となる」としている。 なお、もっとも一般的に報告された有害事象は胃腸関連であり、軽度から中等度の重症度が多かった。 |
週1回投与のデュアルGIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」が、心血管リスクが増加した2型糖尿病の成人の腎臓転帰を改善することが、第3相試験であるSURPASS-4で示された。
腎転帰不良のシグナルであるマクロアルブミン尿の新規発症率は、チルゼパチド群で有意に低かった(ハザード比 0.41)。 さらに、2型糖尿病および高い心血管リスクを有する患者で、チルゼパチドは腎機能喪失の速度および慢性腎臓病(CKD)の進行のリスクマーカーである尿タンパク排泄量を減少させた。 |
カリフォルニア大学機械工学部のSumita Pennathur教授が、より低侵襲で痛みが少なく、低コストで、キャリブレーションフリー、さらにはインスリンポンプにも対応した、新しい持続血糖モニター(CGM)を開発したと発表。
マイクロニードルを備えたコインサイズのパッチにより、痛みをともなわずに非常に少量の間質液から、光学的にグルコース値を検出し、ワイヤレス送信する。 「シームレスな血糖コントロールを実現し、危険な低血糖および高血糖を回避することが、糖尿病管理の重要な目標」と、Pennathur教授は述べている。 |
American Diabetes Association 82nd Scientific Sessions
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[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]