第82回米国糖尿病学会(ADA2022) ハイライト (3) 若い1型糖尿病患者のメンタルヘルケアの必要性

2022.06.15
 第82回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA2022)が、2022年6月3日~7日にニューオーリンズで開催された。オンデマンドは9月5日まで公開される予定。

 米国糖尿病学会(ADA)は、米国の1億3,300人が糖尿病か前糖尿病(prediabetes)だと推定している。過去20年で糖尿病と診断された米国人の数は2倍以上に増えた。

 週1回投与のGLP-1受容体作動薬「デュラグルチド」は、若年の2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善するのに優れていることが示された。
 生活習慣介入のみ、または基礎インスリンの有無にかかわらずメトホルミンで治療された、10歳~18歳の154人の2型糖尿病患者を登録。
 週に1回の0.75mgまたは1.5mgのデュラグルチド注射は、26週間にわたり、BMIに影響を及ぼさずに血糖コントロールを改善する点で、プラセボよりも優れていた。
 安全性はデュラグルチドを使用している成人で確立された安全性プロファイルと一致。

 肥満は1型糖尿病のリスク上昇とも関連していることが、イスラエルのシェバ医療センターが146万人の若年者を対象に行った調査で示された。肥満や過体重によってリスクが上昇するのは2型糖尿病とされてきたが、自己免疫疾患にも関連するという。
 1型糖尿病の新規発症例777件で、肥満の若年者は1型糖尿病の発症リスクが2倍に、過体重では54%、それぞれ増加することが明らかになった。BMIは正常範囲内だが高めの若年者もリスクが41%増加。BMIが5上がるごとに、1型糖尿病発症の調整済みリスクは35%増加するという。
 新たに診断された1型糖尿病の症例の8分の1(12.8%)が、若年期の過剰な体重増加に起因する可能性がある。若年者の肥満は世界的に急速に増えており、公衆衛生上の新たな課題となっている」としている。

 若年や若者の1型糖尿病患者の自殺の防止とメンタルヘルケアについてのシンポジウムを開催。
 調査によると、若年の1型糖尿病患者は、糖尿病ではない人に比べ、自殺願望があると感じている割合が61%高いという。自殺は、米国の20~24歳の若者の主要な死因となっており、そのリスクは1型糖尿病の若者ではさらに高い。実際、1型糖尿病患者の死亡の最大7%は自殺の結果だというショッキングな報告もある。
 しかし、うつ病や自殺に対策するためのスクリーニングツールは、自殺の危険にさらされている個人を見逃すことが多く、1型糖尿病患者の集団のリスクは非常に過小評価されている。

 米国国立衛生研究所(NIH)が、糖尿病に対する食料不安と食事の質の影響について調査。
 栄養価の高い食事へのアクセスが多い米国人は、平均して糖尿病有病率が低い。糖尿病の米国成人の全国サンプルのうち、30%以上に、活動的で健康的な生活をおくるのに十分な食料への一貫したアクセスが欠如した食物不安がみられ、食事の質が低いことが明らかになった。
 米国では、社会経済的地位の低い個人は地位の高い個人に比べ、糖尿病を発症しやすく、合併症を経験することも多く、早死の可能性がより高い。

American Diabetes Association 82nd Scientific Sessions

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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