GLP-1受容体作動薬による筋肉減少は運動・食事・服薬遵守で最小限に抑えられる 欧州肥満学会で発表

2025.05.07

 減量のためにGLP-1受容体作動薬あるいはGIP/GLP-1受容体作動薬を投与されている患者に対して、薬物・運動・食事に関する適切な指導を提供することで、体重が減少するにつれて筋肉量(除脂肪量)が減少するのを最小限に抑えられるという、6ヵ月の前向きコホート研究の結果が発表された。

 「タンパク質摂取量、運動指導、服薬アドヒアランス、定期的なフォローアップといった要因が、この研究の成功に貢献していると考えられる。筋肉量の維持するために最適化した食事療法と運療療法についてより深く理解する必要がある」と、研究者は指摘している。

インクレチン関連薬による減量中の筋肉量の減少は最小限に抑えられる 適切な患者指導が必要

 減量のためにGLP-1受容体作動薬あるいはGIP/GLP-1受容体作動薬を投与されている患者に対して、薬物・運動・食事に関する適切な指導を提供することで、体重が減少するにつれて筋肉量(除脂肪量)が減少するのを最小限に抑えられるという、6ヵ月の前向きコホート研究の結果が発表された。

 研究は、米ニューヨーク市のレノックスヒル病院およびドナルド&バーバラ ザッカー医科大学/ノースウェル医科大学のDinabel Peralta-Reich氏、ニューヨーク ウェイト ウェルネス メディシンのAlexandra Filingeri氏らによるもの。詳細は、5月にスペイン・マラガで開催される欧州肥満学会年次会議(ECO 2025)で発表される予定。

 2型糖尿病の治療薬として使用されているGLP-1受容体作動薬は、体重管理と減量促進の効果が高いことが証明され、肥満症の治療薬としての利用も増えている。また、GIP/GLP-1受容体作動薬も米国などで2型糖尿病および/または肥満症の治療薬として承認されている。

 これらの薬剤の使用を支持する研究は増えている一方で、減量にともなう体組成の変化、とくに筋肉量の減少は臨床的な課題となっており、筋肉などの除脂肪体重を維持しながら減量を促進する介入が求められている。

 そこで研究グループは、GLP-1受容体作動薬(セマグルチド)あるいはGIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド)のいずれかが処方された、過体重・肥満のある、18~65歳(平均年齢 47歳)、ベースラインのBMIの平均が31.4の成人患者200人を対象に、6ヵ月間の前向きコホート試験を実施した。

 参加者の40%(80人)がセマグルチド、60%(120人)がチルゼパチドが投与された。参加者は、肥満症の専門医による薬物療法、筋力トレーニングなどの運動療法、タンパク質摂取などに関する食事療法の指導を受けた。

 生体電気インピーダンス法を用いて体組成測定ができる体重計「InBody 570」を用いて、ベースライン、3ヵ月後、6ヵ月後に測定を行った。このデバイスにより、体水分量(細胞内/細胞外)、骨格筋量、体脂肪率、内臓脂肪、部位別筋肉分布などが測定できる。

 主要評価項目は体脂肪と筋肉量の変化として、統計モデルを用いてデータを分析し、介入前後で比較した。服薬アドヒアランス、身体活動、栄養などに関する定性データも収集した。

 6か月後に全員が研究を完了し、平均体重を、男性は101kg(223ポンド)から88kg(193ポンド)に減少し13%の減量に成功し、女性は71kg(156ポンド)から62kg(137ポンド)に減少し12%の減量に成功した。

 研究開始後6ヵ月の時点で、男性は脂肪量が12kg(25ポンド)減ったのに対し、筋肉量はわずか1kg(2.4ポンド)の減少にとどまり、女性は脂肪量が平均10.8kg(23.8ポンド)の減ったの対し、筋肉量はわずか0.63kg(1.4ポンド)の減少にとどまった。

 自己申告にもとづく服薬アドヒアランスは、3ヵ月後に95%、6ヵ月後に89%で、定性データによると、とくに定期的な筋力トレーニングと継続的なタンパク質摂取が、筋肉の維持と筋力の向上に関連していることが示された

 「GLP-1受容体作動薬とGIP/GLP-1受容体作動薬は、肥満患者の体重と体脂肪量を効果的に減少させることが実証された。ある程度の筋肉量の減少が予想されていたが、専門医の適切な指導が加われば、筋肉量の減少を最小限に抑えられることが示唆された」と、研究者は述べている。

 「自己申告によるタンパク質摂取量、運動指導、服薬アドヒアランス、定期的なフォローアップといった要因が、この研究の成功に貢献していると考えられる。筋肉量の維持するために最適化した食事療法と運療療法についてより深く理解するに、さらなる研究が必要となる」。

 「本研究は現在も継続中で、さらにデータの収集が続けられており、セマグルチドとチルゼパチドの体重、除脂肪体重、脂肪量の減少の違いについて現在も検討している」としている。

Study suggests lean muscle mass loss can be minimized during weight loss therapy using newer incretin obesity drugs (欧州肥満学会 2025年4月9日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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