2型糖尿病の父親のメトホルミン服用は先天性奇形のリスクを増大させない
この研究の解析対象は、ノルウェーで2010~2021年に、精子形成期(妊娠成立前3カ月)の服薬状況の記録のある61万9,389人の父親とその児、および、台湾で2004~2018年に同様の記録のある256万3,812人の父親とその児。主要評価項目をあらゆる種類の先天性異常のリスクとし、副次的に臓器特異的な奇形のリスクを評価した。
ノルウェーのコホートでは2,075人(0.3%)の父親が精子形成期にメトホルミンを服用しており、その児104人(5.0%)に先天性奇形が記録されていた。台湾のコホートでは、1万5,276人(0.6%)の父親が精子形成期にメトホルミンを服用し、その児512人(3.4%)に先天性奇形が記録されていた。精子形成期のメトホルミン服用と児の先天性奇形のリスクの関係は以下に記すように、交絡因子を調整するに従い有意性が失われた。
まず、2型糖尿病患者以外も含めた交絡因子未調整モデルでの解析結果をみると、ノルウェーのコホートではメトホルミン使用が先天性奇形リスクと有意な関連があり[相対リスク(RR) 1.29、95%信頼区間 1.07~1.55]、台湾のコホートでは有意でないわずかな関連が観察された[RR 1.08、同 0.99~1.17]。
次に、対象を2型糖尿病患者のみとした解析では、ノルウェーのコホート[RR 1.20、同 0.94~1.53]、台湾のコホート[RR 0.93、同 0.80~1.07]のいずれも有意な関連はみられなかった。
続いて行った、2型糖尿病患者のみ、かつ傾向スコアオーバーラップ重み付け法で調整したモデルでは、ノルウェーのコホート[RR 0.98、同 0.72~1.33]、台湾のコホート[RR 0.87、同 0.74~1.02]のいずれも、相対リスクがより低下した。
副次評価項目の臓器特異的な奇形との関連も非有意であり、母親の糖尿病の有無などを考慮したいくつかのパターンでの感度分析でも、結果は一貫していた。
さらに、父親の精子形成期のメトホルミン使用の有無が異なる児のきょうだい(ノルウェーから76組、台湾から581組)を抽出して先天性奇形の発生頻度を比較した結果、いずれのコホートでも有意な違いは認められなかった(交絡因子調整後のオッズ比(OR)がノルウェーでは0.83[同 0.43~1.59]、台湾ではOR 0.84[同 0.68~1.04])。
著者らは、「本研究で示された結果は患者に安心感を与えるとともに、子供をもうけようとしている2型糖尿病男性の治療に当たる臨床医が、メトホルミンを選択する際の判断に役立つだろう」と述べている。
[HealthDay News 2024年10月17日]
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