SGLT2阻害薬を使用中にCOVID-19に罹患 正常血糖糖尿病ケトアシドーシス(DKA)を発症した症例 米国内分泌学会
SGLT2阻害薬を使用中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患し、正常血糖糖尿病ケトアシドーシスを発症した2型糖尿病患者の症例報告が、米国内分泌学会(AACE)の「AACE Clinical Case Reports」に12月28日掲載された。著者らは、シックデイにはSGLT2阻害薬の服用を中止することの徹底を呼び掛けるとともに、同薬とCOVID-19の間に特異的な関連が存在する可能性を考察している。
DKAは1型糖尿病患者に発症することが多いが、2型糖尿病患者でも感染症罹患時などには発症リスクが上昇する。DKAは通常、顕著な高血糖を伴うのに対し、SGLT2阻害薬使用時には著明な血糖上昇を伴わない「euglycemic diabetic ketoacidosis;euDKA」を発症し得る。今回の報告も全て、SGLT2阻害薬を用いていた2型糖尿病のeuDKA症例。米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院1施設で、COVID-19罹患に伴うeuDKAが2カ月間で5例発生した。同院のRebecca J. Vitale氏らが報告した。
症例1は、高血圧が併存する79歳の男性で、糖尿病に対してエンパグリフロジンとメトホルミンが用いられていた。DKA症状のために入院後にCOVID-19罹患が判明、一時気管挿管も要したが生存退院した。症例2は、高血圧と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)併存の52歳男性。エンパグリフロジン、グリピジド、メトホルミンなどで治療されていた。前医でインスリンが投与されないまま転送され、到着時に挿管。軽度DKAと認められた。COVID-19により死亡。その他、症例3は高血圧と脂質異常症が併存する69歳男性、症例4は脂質異常症の併存する53歳女性、症例5は高血圧併存の70歳女性で、いずれも生存退院した。
これら5例は全て血糖値が300mg/dL未満であり、COVID-19感染以前にDKAの既往はなかった。入院時に全ての経口血糖降下薬が中止され、静脈内インスリン持続投与後に皮下投与に移行。生存退院した患者に対しては、SGLT2阻害薬の処方を中止した。
COVID-19罹患に関連しeuDKAを発症したSGLT2阻害薬使用2型糖尿病患者が、単施設で短期間に5例見られたことについて、著者らは「単にSGLT2阻害薬処方件数の増加とCOVID-19パンデミックの重複を反映した結果かもしれない」としながら、「COVID-19感染とSGLT2阻害薬使用によるeuDKAの発症に特異的な関連が存在する可能性もある」としている。その機序としては、膵島に対する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の直接的な毒性作用、ケトーシスを促進する炎症反応の亢進、COVID-19による食欲不振や嘔吐とSGLT2阻害薬の利尿作用とによる脱水の進行などが考えられるという。
結論として、「COVID-19感染が疑われる場合、糖尿病のシックデイルールの基本に従い、SGLT2阻害薬の服用を中止するよう、患者に伝えておくことが重要だ」と述べている。
[HealthDay News 2021年1月5日]
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