MR拮抗薬「フィネレノン」が2型糖尿病を合併するCKD患者の心血管系アウトカムで一貫した有用性を示す 心血管疾患の既往の有無にかかわらず

2020.12.15
 バイエル薬品が開発中のMR拮抗薬「フィネレノン」について、心血管疾患の既往の有無にかかわらず、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)患者の心血管系アウトカムで一貫した有用性が示された。
 第3相臨床試験FIDELIO-DKDで、「フィネレノン」は心血管イベントの複合リスクを有意に低減し、心血管疾患の既往の有無にかかわらず同程度の有効性が示された。
 2型糖尿病を合併するCKD患者は心血管疾患で死亡する可能性が3倍高い。開発中のフィネレノンは疾患進行の主要な進展要因であるMRの過剰活性化に特異的に作用するMR拮抗薬。

FIDELIO-DKDの部分集団解析から得られた最新データが米国心臓学会(AHA)学術集会2020で発表

 バイエル薬品は、第3相臨床試験「FIDELIO-DKD」から得られた最新データより、2型糖尿病を合併するCKD患者で、「フィネレノン」はプラセボと比べ、心血管疾患の既往の有無にかかわらず、主な心血管系の副次複合評価項目を一貫して低減したことが示されたと発表した。

 「フィネレノン」は、同社が臨床開発中の新規非ステロイド性選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)で、MR系の過剰活性化による悪影響を抑制することが示されている。MRの過剰活性化は、炎症や線維化の過程を通した腎臓や心血管系の障害の主な原因となる。

 この新しい部分集団解析は、2型糖尿病を合併するCKD患者で、心血管疾患の発症抑制および再発抑制での「フィネレノン」の可能性を示している。

 事前規定された「FIDELIO-DKD」試験の本部分集団解析は、AHA(米国心臓学会)学術集会2020のLate Breaking Scienceセッションで発表されるとともに、医学誌「サーキュレーション」に同時掲載された。

 「FIDELIO-DKD」試験の結果、「フィネレノン」は主な心血管系の副次複合評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院)の最初の発現のリスクをプラセボと比べ14%有意に低減したことが最近発表されており、本部分集団解析は新たなデータとなる。

 心血管系の副次複合評価項目のハザード比に関して、「フィネレノン」の全体として有意で臨床的に意味のある有効性は、心血管疾患の既往により変わらなかった(交互作用p値:0.85)。

 心血管疾患既往のある被験者のうち、心血管系の副次複合評価項目はフィネレノン群の231人(17.7%)、プラセボ群の263人(20.2%)に発現した(100患者年当たりの発現率はそれぞれ7.18、8.5;HR 0.85[95%信頼区間CI, 0.71-1.02])。

 心血管疾患既往のない被験者のうち、心血管系の副次複合評価項目はフィネレノン群の136人(8.9%)、プラセボ群の157人(10.2%)に発現した(100患者年当たりの発現率はそれぞれ3.43、3.92:HR 0.86[95%CI, 0.68-1.08])。

 全体として、「フィネレノン」は忍容性が高いことが示され、有害事象の多くは軽度または中等度だった。重篤な有害事象の発現頻度は、プラセボ群と比べフィネレノン群では低率だった(フィネレノン群31.9%、プラセボ群34.3%)。高カリウム血症に関連する有害事象は、プラセボ群と比べフィネレノン群で多くみられた(フィネレノン群18.3%、プラセボ群9%)。

 「2型糖尿病を合併するCKDの患者さんは腎不全に進行するリスクが高いだけでなく、心血管イベントのリスクも高く、心血管疾患の高い罹患率と死亡率に直面しているといえます。FIDELIO-DKD試験から得られた新しい知見は、フィネレノンが2型糖尿病を合併するCKD患者さんで、心血管疾患の既往にかかわらず心血管イベントリスクを低減する新しい治療選択肢となる可能性を示しています」と、ギリシャ・アテネの国立カポディストリアン大学循環器学教授で、「FIDELIO-DKD」試験の共同治験責任医師のガラシモス フィリパトス氏は述べている。

Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes(ニュー イングランド ジャーナル オブ メディシン 2020年12月3日)

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