慢性腎臓病の早期診断に「D-セリン」が有用 糸球体ろ過量と強く相関 医薬基盤・健康・栄養研究所

2019.03.28
 医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)は、慢性腎臓病の早期診断に、D-アミノ酸のひとつである「D-セリン」が有用であることを発見した。血中D-セリンの測定により腎機能を推定でき、血液と尿を同時に測定すると慢性腎臓病の診断に有効だという。

D-セリン測定による慢性腎臓病の早期診断に期待

 研究は、医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)プロジェクトのプロジェクトリーダーで難治性疾患研究開発・支援センター長の木村友則氏と、大阪大学腎臓内科の猪阪善隆教授、部坂篤氏、資生堂らとの共同研究によるもの。その成果は、科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。

 慢性腎臓病患者数は世界で8.5億人、日本では人口の1割が該当すると推定される。腎臓病が進行すると心不全、心筋梗塞を代表とする循環器疾患など致死的疾患の合併症のリスクが上昇する。日本では毎年3万人以上の慢性腎臓病患者に透析療法が導入されており、早期発見・治療が切迫した課題になっている。

 腎機能を知るために通常は糸球体ろ過量が使用されるが、これを正確に測定するには多くの労力が必要となり、実際の臨床ではほとんど測定されていない。その代替として、血中のクレアチニン値などが腎機能推定に利用されているが、クレアチニンは筋肉量などの影響を受け、これによる糸球体ろ過量推定の正確性には課題がある。

 一方、アミノ酸にはL体とD体のキラルアミノ酸(鏡像異性体のアミノ酸)があり、これまで体内にはL体しかないと考えられていた。しかし研究グループは、体中に微量のD-アミノ酸が存在し、腎臓病の予後と関連することを発見していた。

 研究グループは今回、D-アミノ酸と腎臓病の関係に着目。世界でもっとも正確かつ感度良く測定できる2次元HPLCシステムを用いて、慢性腎臓病患者と健康な人の血中と尿中のD-アミノ酸を検討した。

 その結果、D-セリンが腎臓の機能(糸球体ろ過量)自体と強く相関し、これが従来の腎臓病のマーカーと同等以上であることが判明した。さらに、尿のD-セリンは糸球体ろ過量以外の腎機能を反映しており、血液と尿のD-セリンを組み合わせることで腎臓病の診断率が良くなることを確かめた。
 研究では、D-セリンの測定が糸球体ろ過量を推定するのに有用で、腎臓病の早期診断に有用で、診療において重要な情報をもたらすことが明らかになった。さらに、糸球体ろ過量という腎機能以外の情報ももっており、腎臓病を見つけるのに別の視点から役に立つことが示唆された。

 研究グループは「この技術を応用すれば、人工透析導入患者数の抑制や、腎臓病の精密医療(プレシジョンメディシン)、腎臓病を併発しやすい糖尿病や高血圧、心不全や心筋梗塞などの循環器疾患などの予後改善につながる可能性がある」と述べている。

医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)
D-Serine reflects kidney function and diseases(Scientific Reports 2019年3月25日)

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